日本小児血液学会雑誌
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急性リンパ性白血病治療後期に発症したL-アスパラギナーゼによる壊死性膵炎
石井 武文真部 淳海老原 康博植田 高広吉野 博三井 哲夫久川 浩章谷ケ崎 博菊地 陽田中 竜平中畑 龍俊辻浩 一郎
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2000 年 14 巻 5 号 p. 328-332

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抄録

L-アスパラギナーゼ (L-ASP) は急性リンパ性白血病 (ALL) に対して必須の薬剤であるが, 種々の重篤な合併症を引き起こすことが知られている.今回われわれは, ALLの治療開始後10カ月目に発症したL-ASPによる急性膵炎を経験したので報告する.発症時, 壊死巣を有する膵炎と左胸部全体に及ぶ胸水を認めた.初期治療として循環動態の安定化, 落痛対策, 膵外分泌の抑制 (H2ブロッカーとソマトスタチンアナログ), 感染症予防を行った.次いで膵仮性嚢胞を形成したが, 外科的手技を要せずに軽快した.膵炎発症60日後より化学療法を再開し, ALL発症後2年間寛解を保っている.L-ASPによる急性膵炎は稀で, 寛解導入時のみならず, 治療後期にも発症することがある.急性膵炎は急速に増悪し, また定まった治療法もない.様々な治療法が提案されているがその有効性はほとんど証明されていない.グループ研究において対策を講じる必要がある.

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