日本小児血液学会雑誌
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肝炎後再生不良性貧血
工藤 寿子小島 勢二
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2003 年 17 巻 6 号 p. 557-561

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抄録

1988年4月~2000年3月までに日本小児血液学会の再生不良性貧血委員会に登録された肝炎後再生不良性貧血 (HAA) 85例について解析を行った.初回治療として骨髄移植 (BMT) を施行されたのが23例, 免疫抑制療法 (IST) を施行された症例は60例であった.IST無効例16例中12例に救済療法としてBMTが施行された.ドナーソースをみると, 初回治療でBMTを施行された23例のうち17例は兄弟から移植を受けていた.救済療法では12例中6例が非血縁ドナーであった.先行する肝炎の原因ウイルスを検索したが, 大半の症例では肝炎の原因ウイルスは同定できなかった.小児HAA 48例および特発性再生不良性貧血 (IAA) 156例のHLA-DRの解析をしたところ, 健康人対照群に比してDR9が有意に高発現であった (54.2%versus 27.8%;RR=3.07) が, 一方, IAAでは有意差は認められなかった.HAAの非移植例での生存率を比較すると, 1994年以前と1994年以降の生存率はそれぞれ70.8±9.3%, 91.9±4.5%であり, 同時期に発症したIAA非移植例の生存率と差を認めなかった.HAAとIAAに対するISTの有効率は有意差はないと考えられた.Alternative donorからの造血幹細胞移植や最重症例に対する感染症対策の治療や予防法の確立, 原因となる肝炎ウイルスの同定などが今後の検討課題と考えられる.

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