日本小児血液学会雑誌
Online ISSN : 1884-4723
Print ISSN : 0913-8706
ISSN-L : 0913-8706
自己免疫性溶血性貧血およびIgA欠損症を乳児期より認め, その後common variable immunodeficiencyの病態と汎血球減少を呈してきた1女児例
9年間の経過
山本 正生福永 慶隆神野 直昭竹鼻 純子浅野 健伊藤 保彦植田 穣
著者情報
ジャーナル フリー

1988 年 2 巻 1 号 p. 84-89

詳細
抄録

患児は, 生後5カ月時に貧血と黄疸にて入院した.臨床症状と検査成績によりIgA欠損を伴った自己免疫性溶血性貧血 (AIHA) と診断した.洗浄赤血球輸血とステロイド療法を行い, 治療3週後より貧血の改善が認められたが, 直接クームステストは陽性であった.退院後1歳と1歳5ヵ月時には短期ステロイド療法により改善した網状赤血球増多と貧血を認めた.その後はAIHA再燃のエピソードは現在まで認めていない.3歳時より上気道炎と中耳炎のエピソードが多くなり始めた.IgA欠損に加えて, IgG, IgMも徐々に低下してきた.6歳時, 無γ-グロブリン血症, common variable immunodeficiencyの病態となり, このときクームス試験が陰性となった.汎血球減少症も併発してきた.免疫学的検索では, T細胞の異常が示唆された.定期的経静脈的ガンマグロブリン療法により, 感染の頻度は著明に少なくなった.臨床経過の追跡と免疫学的検索をさらにおこなっている.

著者関連情報
© (社)日本複写権センター
前の記事 次の記事
feedback
Top