日本小児血液学会雑誌
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フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病の治療
真部 淳
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2008 年 22 巻 4 号 p. 306-311

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抄録

フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病 (Ph+ALL) は小児ALL全体の3-5%を占めるに過ぎないが, 予後不良で重要な疾患である.90年代までPh+ALLは同種造血幹細胞移植 (SCT) の絶対適応であった.2000年以後, 慢性骨髄性白血病 (CML) に対する分子標的チロシンキナーゼ阻害剤であるimatinibが開発され, Ph+ALLに対する効果が検討された.再発例においてimatinib単独投与は一定の効果はあるが, ABL遺伝子に変異が起こり, 短期間にその効果が消失する.新規症例に対するimatinibと化学療法との併用は, 安全かつ有効で, 長期寛解例が多くみられるが, いまだに同種SCTは適応である.新世代のチロシンキナーゼ阻害剤はimatinibに比べて殺細胞効果は大きいが, 多くはT 315I変異例に対して無効である.今後はチロシンキナーゼ阻害剤同士の併用も試されるべきであろう.

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