薬学教育
Online ISSN : 2433-4774
Print ISSN : 2432-4124
ISSN-L : 2433-4774
実践報告
汎用性の高い体験型実習モデル(服薬不自由体験)の提案
仁木 一順 上田 幹子上島 悦子
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2017 年 1 巻 論文ID: 2016-002

詳細
Abstract

2015年度より,改訂版薬学教育モデル・コアカリキュラムに基づく新たな薬学教育が開始するのに先立ち,本学では2014年度より薬学的視点を重視した新たな不自由体験実習を考案した.

過去,車椅子体験,高齢者疑似体験等が実施されてきたが,臨床現場では,上記のサポートは看護師や介護士が行うことが多いため,薬学部で実施する特色を十分に反映しているとは言い難かった.一方,新たな不自由体験実習では,服薬困難を感じうる状況として,片麻痺,視覚障害,嚥下障害,発話不可の場面を設定し,各場面体験後に調査票形式での実習記録を作成した.その結果,大多数の学生から,身体に不自由がある場合の服薬は予想以上に難しく,それを体験できたことが今後の学習や研究に大いに刺激となったとの感想が寄せられたことから,服薬不自由体験実習は学生の意識改革に有用であり,将来,創薬研究を含めた広義の医療人となりうる薬学生に好影響を与えたことが示唆された.

目的

2015年4月より,改訂版薬学教育モデル・コアカリキュラムに基づく新たな薬学教育がスタートした.改訂版薬学教育モデル・コアカリキュラムでは,「薬剤師として求められる基本的な資質」を10の視点より明確にした1.この中で,特に薬物治療では,患者・生活者本位の視点に立ってチーム医療の中で実践的な能力を発揮することが求められている.

これまで多くの大学で,車椅子体験,食事補助体験,高齢者体験等の不自由体験実習が実施されてきた.本学においても,看護学科と連携し,介護体験等による不自由体験実習を実施してきた.しかし,実臨床現場では上記のサポートは看護師や介護士が行うことが多いため,不自由体験実習を薬学部で実施する意義を十分に反映しているとは言い難かった.

そこで,本学では,2015年度から改訂版薬学教育モデル・コアカリキュラムが施行されるのに先立ち,その前年度より,本邦初の薬学的視点を重視した新たな不自由体験実習プログラム(以下,服薬不自由体験実習)を実施し,体験型実習モデルとしての汎用性を従来の不自由体験実習と比較検討した.

方法

1. 服薬不自由体験実習

対象

2014年度の薬学部1年生(6年制課程,4年制課程いずれも含む)84名を対象とした.学生には,服薬不自由体験実習で感じたことを自身が整理するため,かつ,感じ方に他者と大きな違いが出るのかをフィードバックするために記録用紙へ記入するように説明した.その後,学生は実習に際し,以下に記載する各場面を体験後に,図1に示す記録用紙へ記入した.

図1

服薬不自由体験実習記録の記入項目.

片麻痺,視覚障害,嚥下障害,発話不可の各実習後,アンケート形式での記録に記入した.

服薬不自由体験実習の概要

高齢者や障害者が服薬困難となる状況として,1)片麻痺,2)視覚障害,3)嚥下障害,4)発話不可の場面を設定した.学生は4グループに分かれて,1)~4)の実習をローテーションした.

1)片麻痺:片麻痺状態を想定し,片手で容器の開封を実施した.

錠・カプセル剤:グルコンサンK錠®とウルグートカプセル®(2号カプセル)を1錠ずつあるいは1個ずつに分けて用い,学生はそれらを片手でシートから取り出した.

散剤:グラニュー糖を自動分包機でグラシンポリ紙あるいはセロポリ紙で分包したものをはさみ等の道具を用いずに片手で開封し,服用した.

水剤:30 mLの投薬瓶に水道水を20 mL程度入れておき,学生は片手で投薬瓶を開けて,水10 mLをこぼさずに正確に計量カップに量り取った.

2)視覚障害:アイマスク,タオル等で目隠しをすることで視覚障害状態を設定し,服用,薬袋記載情報の読み取りを行った.

服用:学生が準備してきたプリンやゼリー等を,目隠しした状態で,まずは自身の手で口へ運んだ.その後,ペアの学生に食べさせてもらった.

薬袋からの用法の読み取り:目隠しした状態で,触知シールを貼付した薬袋から,1日服用回数と服用時間の読み取りを試みた.触知シールは,神戸市薬剤師会ハートフル薬局が利用しているものを用い,図2aに示すように,1日服用回数につき1枚,服用時間につき1~3枚を薬袋に貼付し,両者の組み合わせとして合計23通りを用意した.

図2

服薬不自由体験実習触知シールの例.

触知シールは,神戸市薬剤師会ハートフル薬局が利用しているものを用い,図2aに示すように模擬薬袋に貼付して本実習に用いた.本シールは,図2b中に示すように,サイコロの目のような記号で1日の服用回数を表し,太陽や月等の記号で服用時間を表す.(神戸市薬剤師会HPより引用;http://www.kobeyaku.org/info/heartful/08.html)

3)嚥下障害:嚥下障害時を想定し,服薬を疑似体験した.

服薬補助ゼリーを用いての服薬:市販のらくらく服薬ゼリー®を用い,グラニュー糖あるいは食塩を混ぜて摂取し,学生は服薬補助ゼリーによって薬剤(今回はグラニュー糖あるいは食塩)の味がどのように影響を受けるのかも体験した.学生にはグラニュー糖か塩のいずれかがゼリーに含まれていることを説明し,ゼリーを入れたカップには,グラニュー糖混合時には黒丸で,食塩混合時には白丸で目印をつけた.学生は,まず黒丸か白丸かを記録用紙に記入してからゼリーを服用し,いずれの味がしたかを回答した.記録用紙を回収後,ゼリーへの混合物と回答が一致しているかどうかを確認した.

大きな錠剤の服薬:錠剤の代わりに市販のラムネ菓子を用いた.学生はこれを俯いた状態で飲みこもうと試みた.飲みこむのが困難な場合は,かみ砕いても,吐き出しても構わないと事前に説明し,ティーチングアシスタント(TA)が常時見回ることで安全面には十分に配慮した.

4)発話不可:発話不可時に痛みについて伝達しなければならない状況を想定し,筆談やジェスチャー等,学生は自身が思いついた任意の方法で,痛みの部位や程度について意思伝達を試みた.ペアで相互に伝達し合い,フィードバックにより意思の伝達および理解が出来たのかを確認した.

2. 従来の不自由体験実習

患者役は,どちらかの腕を三角巾で固定し,同じ側の足に重しを巻いた.学生は2つのグループに分かれて,交代で以下1)または,2)3)の実習を体験した.

1)移動動作

片麻痺のある人の移動:2名1組で,患者役がベッドから車椅子に移動するのを介助した.

片麻痺のある人の車椅子の自操:2名1組で,患者役は自操,介助役は患者役が乗った車椅子を移動した.

2)更衣:片麻痺状態で上着(前開きまたはかぶり)の更衣を行った.

3)食事介助:アイマスク,タオル等で目隠しをした患者役の食事を介助した.

3. 従来の不自由体験実習と服薬不自由体験実習の比較

設備,必要物品,必要人員について両者を比較した.

4. 服薬不自由体験実習による学生の意識変化

まず教員とTA合計4名がそれぞれ,記録用紙の感想欄への記載について,「意識向上がみられた」あるいは「意識向上がみられたか不明」のどちらかに分類した.その後,分類結果を相互に確認し,結果が分かれた学生については,討議を重ねて意識向上の有無を判断した.

5. 統計解析

統計解析にはエクセルアドインソフトであるStatcel ver.3(オーエムエス出版)を使用し,有意水準は5%と設定した.

結果

1. 服薬不自由体験実習

対象者のうち,6年制課程の学生は29名(34.5%),4年制課程の学生は55名(65.5%)であった.記録用紙の有効回答率は100%であった.これまで医薬品を飲みにくいと思ったことがある学生は25名(30.1%)であり,苦手な薬の剤形があると答えた学生は31名(37.4%)であった.苦手な剤形として最も多く挙げられたのは散薬であり,次いで大きな錠剤であった.次に,実習時に用いた記録用紙について集計を行った.

1)片麻痺:各剤形のうち,片麻痺状態において,学生が最も開封が困難だと感じたのは散薬,次いで水薬であり,他の剤形と比べて有意な差が認められたが(それぞれ,p < 0.01, p < 0.05),錠剤とカプセル剤の間にはほとんど差異が見られなかった(図3).

図3

服薬不自由実習時,片麻痺状態では開封が困難だった剤形.

各剤形のうち,片麻痺状態において,学生が最も開封が困難だと感じたのは散薬であり,他の剤形と比べて有意な差が認められた(**p < 0.01).その次に困難だと感じた剤形は水薬であり,他の剤形と比べ有意な差がみられた(*p < 0.05).統計解析は,Kruskal-Wallis検定およびSteel-Dwassの多重比較により行った.

2)視覚障害:触知シールにより1日の服用回数が把握出来た学生は73名(88.0%)であり,服用時間が把握出来た学生は57名(68.7%)であった(表1).図2bで示したような朝昼夜等の服用時間による認識度の違いは生じなかった(p = 0.95).また,触知シールの枚数によっても,服用時間の認識度に有意な差は認められなかった(p = 0.98).しかしながら,学生からは,「マークの区別(特に夕と眠前)が難しい.」「凹凸が少なくて分かりにくい.」等という感想が寄せられた.

表1 服薬不自由体験実習記録集計結果
[場面]視覚障害 有効回答数 その他
服用回数の正誤(人数および割合) 83 73(88.0%) 10(12.0%) 0
服用時間の正誤(人数および割合) 83 57(68.7%) 26(31.3%) 0
[場面]嚥下障害 有効回答数 はい いいえ その他
ラムネ菓子は飲み込みやすかったですか?※1 83 6(7.2%) 77(92.8%) 0
ゼリーに混合されたグラニュー糖の味は分かりましたか? 44※2 8(18.2%) 36(81.8%) 0
ゼリーに混合された食塩の味は分かりましたか? 40※2 37(92.5%) 0 3(7.5%)
[場面]発話不可 有効回答数 はい いいえ その他
訴えた内容が分かりましたか? 79 67(84.8%) 12(15.2%) 0
どこが痛いのか分かりましたか? 84 82(97.6%) 2(2.4%) 0
どのように痛いのか分かりましたか? 84 80(95.2%) 4(4.8%) 0

※1学生には,ラムネ菓子を飲み込みやすかったかどうか記入するように口頭で説明した.

※2学生はゼリーに混合されたグラニュー糖,食塩のうちどちらか1つだけを体験しているため,有効回答数は見かけ上,約半分となっている.

3)嚥下障害:俯いた状態ではラムネ菓子は飲みこみにくかったという意見が90%を超えていた(表1).また,服薬補助ゼリーにグラニュー糖あるいは食塩を混合しての摂取では,ゼリーと混合することで多くの学生がグラニュー糖の味を認識できなかった一方,食塩の味は認識できており,それらの認識度に有意な差が認められた(p < 0.01).

4)発話不可:発話不可能な状況でも,多くの学生が相手の訴えた内容を理解でき,痛みの部位,程度についても理解できていた(表1).意思疎通のための手段として多かったのは筆談であり,学生からは「ジェスチャーである程度は伝わるが,筆談の方がより伝わりやすいと思った.」「痛みの程度が分かりにくかった.」「痛みについての質問をどうすれば分かりやすいかが難しかった.」「はい/いいえで答えられるような質問だと伝わりやすいと感じた.」等の感想が寄せられた.

5)服薬不自由体験実習による意識変化:服薬不自由体験実習において学生から寄せられた感想から,医療人を目指すうえでの意識向上がみられた学生は全体で89.9%であった.6年制課程,4年制課程別では,それぞれ86.2%,92.0%の学生で意識の向上がみられた.学生の意識の向上が感じられた代表的な記述としては,以下の通りであった.「患者さんにしか分からない部分をいかに理解するかが大事だと思った.」「症状にあった薬を提供すればいいと思っていたが,服薬方法まで考えた上で患者にあった薬を提供する必要があると思った.」「薬を考える時に,化学物質を考えるだけでなく剤形も考える必要があると思えるようになった.」

2. 従来の不自由体験実習と服薬不自由体験実習の比較

対象学年はいずれも薬学部(薬学科・薬科学科)1年生,講義時間は1コマとした.今回の服薬不自由体験実習では,通常の講義室を3~4室使用した.一方,従来の不自由体験実習では,看護学科の実習室2室を使用した.車椅子実習を行った実習室には,ベッドが22台,車椅子が11台配置された.表2に,従来の実習と今回の実習における必要物品を示した.従来の実習では,ベッド等の購入費用は数百万円と試算された一方,今回の服薬不自由体験実習の準備物品購入費用は約2万円であった.また,従来の実習では,教員8名(看護5名,薬学3名),TA 11名(看護3名,薬学8名)が必要だったのに対し,服薬不自由体験実習では,薬学教員4名,TA 8名と,従来の約6割の人員で実施可能であった.

表2 従来の不自由体験実習と服薬不自由体験実習の必要物品の比較
従来の不自由
体験実習
服薬不自由
体験実習
名称 個数 名称 個数
ベッド 22 服薬らくらくゼリー® 200 g 10
マットレス 22 砂糖 300 g
床頭台 22 食塩 300 g
車いす 11 乳糖 180 g
重し(足用) 22 グルコンサンK® 90錠
22 ベリチーム®カプセル 90カプセル
シーツ* 22 乳糖(グラシンポリ分包品) 90包
枕カバー* 22 乳糖(セロポリ分包品) 90包
三角巾* 44 水薬瓶 90
カップ 90

*実習後,要クリーニング.

必要物品のうち,講義室,机,椅子は除いている.また,学生の持参物品(アイマスク,タオル,プリン・ゼリー等)は,ほぼ共通している.

考察

服薬不自由体験実習を受けた学生の内,約30%がこれまでに薬を飲みにくいと感じた経験があり,特に散薬に対し苦手意識を抱いている傾向がみられた.笠師らは大学病院における調査により,患者の約40%が薬を飲みづらいと感じ,大きい錠剤や散薬に苦手意識を持っていたと報告しており2,本実習を受けた学生も実患者と同様の傾向を示していた.

今回,学生は,高齢者や障害者が服薬困難となる場面のうち,片麻痺,視覚障害,嚥下障害,発話不可状態について疑似体験した.片麻痺は片半身で麻痺が発生する症状であり,脳梗塞,脳出血等その原因は多岐にわたる.片麻痺状態では,片手での服薬動作を強いられるため,剤形によっては介護なしでの服用が不可能な場合があり,できるだけ自力で服用できるように1回量包装を施す,ヒートに切れ目を入れておく等の工夫がなされている時もある.今回,様々な剤形に対して,学生は剤形の違いによる開封の難しさを経験し,散薬が最も難しいと感じていた.高齢者を対象とした複数施設における過去の調査では,錠剤やカプセル剤に比べて散薬が飲みにくいと感じられており,その理由の一つとして「開封しにくい」ことが挙げられていた3

次に,視覚障害は様々なことが原因となりうるが,緑内障,糖尿病性網膜症がその多くを占めている4.現在,視覚障害者に対する服薬指導時に触知シールや点字シールを用いる場合がある.また,視機能がある程度残っている患者に対しては,文字を太く大きくする,色を付ける等の工夫がなされている.今回は触知シールを用いて薬袋記載情報の一部の読み取りを行った.1日服用回数を把握できた学生は88.0%,服用時間を把握できた学生は68.7%と,多くの学生が触知シールからの情報を読み取れていたが,シールの凹凸の少なさや,マークの違いの分かりにくさが原因で認識に苦労した様子が見られた.この体験で初めて触知シールを知った学生が多く,中には,服薬指導時の工夫の必要性を感じた学生や,シールの分かりにくさを改善する等の医薬品以外の開発でも医療に関われることがあるという意識が芽生えた学生もいた.

さらに,嚥下障害は,高齢者,認知症患者等にみられ,高齢者介護施設では入所者の60%が摂食・嚥下障害を有していたという報告がある5.嚥下障害は誤嚥性肺炎につながるリスクが高いため,適切な服薬指導が重要である.服薬補助ゼリーを用いた体験では,グラニュー糖の味は感じないが食塩の味は認識できた学生が多かった.今回用いたゼリー自体が多少の甘味を呈するレモン味であったため,グラニュー糖の甘味は感じにくくなった一方で,塩味は感じやすくなったのだと考えられる.このような経験により,薬効成分だけでなく,味も考慮して飲みやすい薬剤の研究に興味を持った学生もいた.また,ほとんどの学生が俯いた状態ではラムネ菓子を飲み込みにくいと感じ,薬剤の大きさが服薬に大きな影響を与えることも体感出来た.

最後に,発語不可状態は,手術等による声帯の損傷等が原因として挙げられるが,言葉を正しく発音できない構音障害と言葉を理解できない,もしくは,正しく利用できない等の失語症に大別できる6.構音障害者は視覚,聴覚には支障がないが,舌が動かない,唇が閉じない,または嚥下障害を伴うことがあり,剤形に工夫が必要である.失語症の場合は,知的障害も伴うことがあり,さらにコミュニケーションが困難となるため,答えが長くなるような質問はできるだけ避け,「はい/いいえ」で答えられるような形で聞き取りを行うことが重要である.本実習では,発話不可の患者役となった場合,筆談を意思伝達の手段に用いた学生が多かった.しかし,痛みの部位については,筆談だけではうまく表現できず,ジェスチャーと組み合わせた方が効果的に伝えらえると,試行錯誤しながら学習していた.また,簡単に「はい/いいえ」で答えられる聞き方を質問者はするべきだとも身をもって感じ,発語不可者へのふさわしい対応を教員からの説明を受けずとも会得していく様子がみられた.

次に,従来の不自由体験実習との比較については,服薬不自由体験実習は,大がかりな設備(投資)を必要とせず,通常の講義室や薬学教員・TAのみで実施可能であった.すなわち,低コストかつ他の実習と同様の規模で,負担なく実施できることが確認できた.

今回設定した各障害は,高齢化の進行に伴い今後も増加の一途を辿ると考えられる.また,近年問題となっている残薬の増加についても,何らかの服薬困難がその背景となっている可能性が考えられるため,高齢者や障害者の問題を把握して臨機応変に対応する能力は,薬剤師にとって今後さらに重要になると予測される.それらを効率的に学習するために,さらには,2015年度から始まった改訂版モデル・コアカリキュラムで要求される真の実践能力を養うためには,体験型実習の充実化が必要である.現在,国内では従来の高齢者体験,障害者体験等が不自由体験実習として実施される例が多く,また,米国では,高齢者の視力障害体験が実施されている例があるが,本実習のように不自由さを感じる種々の場面を想定し,特に服薬に焦点を当てた服薬不自由体験実習は筆者の調べた限り国内外で初めてである.従って,実習方法・評価方法も筆者らが独自に考案しており,今後は実習記録の改良,定量化できる評価尺度の導入等を含めた実習方法・評価方法の最適化を検討していく必要があると考えている.

しかしながら,今回,学科を問わず多くの学生から意識の向上が感じられたことから,我々が考案した服薬不自由体験実習は,将来,医薬品の創成を含めた広義の医療人となりうる薬学生に好影響を与えられる,学科横断型の汎用性の高い実習モデル基盤になりうると考えられる.今後も,薬学生が医療人としてふさわしい態度を会得できるように,体験型実習の創意工夫に努めていきたい.

発表内容に関連し,開示すべき利益相反はない.

文献
  • 1)  文部科学省「薬学教育モデル・コアカリキュラム平成25年度改訂版」[Internet].(参照2016年8月19日)http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2015/02/12/1355030_01.pdf
  • 2)   笠師 久美子, 宮崎 勝巳.内服薬の剤形と飲みやすさについて.Hospha.2005; 1: 5–7.
  • 3)   橋本 隆男.高齢者の服薬の実態と剤形に対する意識調査.Therapeutic Research.2006; 27(6): 1219–1225.
  • 4)   中江 公裕, 増田 寛次郎, 石橋 達朗.眼科学 日本人の視覚障害の原因―15年前との比較.医学のあゆみ.2008; 225(8): 691–693.
  • 5)   Siebens  H,  Trupe  E,  Siebens  A, et al. Correlates and consequences of eating dependency in institutionalized elderly. J Am Geriatr Soc. 1986; 34(3): 192–198.
  • 6)   望月 秀樹.意識障害/言語障害.診断と治療.2011; 99(1): 25–30.
 
© 2017 日本薬学教育学会
feedback
Top