Japanese Journal of Pharmaceutical Education
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Special Topics “At the beginning of pharmaceutical education research”
Meaning and problem of educational research
Kazuhiko Fujisaki
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2017 Volume 1 Article ID: 2017-006

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著者はまだ「医学教育では食えない」と言われた時代から,「教育研究」をライフワークとしてきた.今では,9割近くの医学部・医科大学に医学教育の専任部門(いわゆる医学教育ユニット)が出来,医学教育を専門として研究実践していても,それでそれなりに社会的にも食っていける時代になったことは隔世の感がある.

世界的にもevidence based medical educationというようなことが言われるようになり,国際的な医学教育の分野別認証評価でも,教育専門家の配置とその教育実践研究に基づく根拠のある教育改善活動が,国際的にも国内的にも求められるような時代になっている.

こういった時代的要請を受けて教育専門家の養成も急務となり,日本医学教育学会では学会認定医学教育専門家の養成を開始しており,また,文部科学省認定医学教育共同利用拠点である岐阜大学医学教育開発研究センター(MEDC)でも新たにアソシエイト/フェロ-シップの制度を開始して教育専門家養成を開始している.

まずは個人史のふり返りから

今から30数年前,まだ医学部生だった頃,当時の日本医学教育学会副会長の中川米造先生に先生の大学院で医学教育の研究をしたいと話したら「医学教育では食えないから,臨床医をやりながら趣味で研究しなさい」と言われ,「教育研究というのはそういうものか」と思ったのが教育研究との出会いである.

大学院入学後に医学教育学会大会で「今度,大学院で医学教育の研究をしようと思っている藤崎です」と,当時の医学教育学会で有名な先生方に挨拶回りをしていると,「医学教育を研究するとは,君も変わっているね」とあちこちで言われ,「どこの学会で,その学会が看板に掲げている学問を大学院で研究すると言ったら変人扱いされるようなことになるのか?!」と,逆にこちらの方が衝撃を受けて驚いたということもあった.後から考えてみると,当時の医学教育学会というのは「それぞれの領域で功成り名を遂げた先生方が,それでも熱意をもって学生教育に取り組んでいる」という,ある種の「名士の会」といった雰囲気だったので,誰も大学院で医学教育学を専攻して研究して,医学教育研究者としてキャリアアップしていくというようなことは予想していなかったからこそ,僕が卒後すぐに「大学院で教育研究をしていく」と言ったことに,みんな戸惑われたのだと思う.

大学院に入ってからの学会発表などでも,大先生方は,絶大な経験蓄積を背景に薀蓄のある発言をされていたりもするのだが,駆け出しの教育経験の乏しい新入り大学院生としては,海外論文のレビューや,調査に基づく実証研究報告等でエビデンスに語ってもらうしかなく,そういった内容の学会発表が主体であった.

何年か続けて医学教育学会に通うようになって暫くたって気づいたことは,自分の取り組んでいる教育実践を医学教育学という学問的な視点から海外論文も含めた文献レビューを踏まえて分析検討している発表は,大先生方も含めて必ずしも多くなく,どちらかというと「やった!出来た!良かった!」というような単発の実践報告例が,学会誌でも学会発表でも当時の医学教育学会ではとても多かったということである.

その頃から30数年経って,海外の医学教育大学院を卒業した若手の先生達も増えてきたし,英語論文で医学教育の国際誌に発信をする先生方も増えてきた.そもそも,医学教育関係の雑誌のインパクトファクターが2~3もあって,医学教育研究でもそれなりのインパクトが稼げるようになってきたのは画期的な気分がしている.

また,医学教育分野では9割近くの医学部・医科大学に医学教育の専任部門(いわゆる医学教育ユニット)が出来て,僕が大学院入学時に中川米造先生に頂いた言葉に反して,医学教育を専門として研究実践していても,それでそれなりに社会的にも食っていける時代になったことは隔世の感があるとも言えよう.

さらには世界的にもevidence based medical educationというようなことが言われるようになり,国際的な医学教育の分野別認証評価でも,教育専門家の配置とその教育実践研究に基づく根拠のある教育改善活動が,国際的にも国内的にも求められるような時代になっている.

こういった時代的要請を受けて教育専門家の養成も急務となり,後述するように日本医学教育学会では学会認定医学教育専門家の養成を開始しており,また,文部科学省認定医学教育共同利用拠点である著者の所属する岐阜大学医学教育開発研究センター(MEDC)でも新たにアソシエイト/フェローシップの制度を開始して教育専門家養成を開始している.

医学教育専門家養成のあゆみ

医療関係職種教育における教育専門家の養成・Teacher Trainingの歴史は,1970年代初頭にWHOが医療関係職種の教育改革には,まず教員のTeacher Trainingが重要だという認識の下に,世界的にTeacher Training(今でいうFD)を主導したことが出発点になっている.

1972年に発行されたWHOのTechnical Report Series 521号において,WHOは医療関係職種教育におけるTeacher Trainingを進めるという画期的な方針を打ち出し,時を同じくしてコペンハーゲンで開催された世界医師会主催の第4回世界医学教育学会でも“Teaching the Teacher to Teach”と銘打ったワークショップも開催されるなど,この時期に一連の動きがスタートしている.

そして,アジア太平洋地域のRTTC(Regional Teacher Training Center)は,オーストラリア,シドニーのニューサウスウエルズ大学内に設置され,そこがアジア太平洋地域のTeacher Trainingの発信基地として,この新しい方針をWorkshop方式という画期的な参加型学習スタイルを中心に具現化していくことになったのである.

シドニーのRTTCで行われた最初のTeacher Training Workshopは1973年6月にWorkshop for Deans and Educational Leadersと銘打って実施され,日本からは故牛場大蔵先生(当時慶応大学医学部長,日本医学教育学会初代会長),故館正知先生(当時岐阜大学学長),日野原重明先生(当時聖路加看護大学学長,現聖路加国際病院名誉院長)の3名が参加された.この当時のシドニーRTTCの活動は非常に活発で,73年に2回,74~76年まで毎年3回のTeacher Training Workshopが開催されており,日本からの参加者も毎回2,3名で,この間の全11回のWorkshopに計24名の教員,医師が日本から参加している.

これだけ短期間にこれだけの数の教員,医師が日本からシドニーのRTTCを訪れたということは,日本の医学教育担当者にとってRTTC でのTeacher Training Workshopが非常に大きなインパクトがあって,その評判を聞いて参加した次の参加者がまた次の評判を広げるという形で,雪崩うつように広がっていった結果であり,まさにその衝撃の強さを表している数字に他ならない.

富士研ワークショップ・臨床研修指導医養成講習会から認定実務実習指導薬剤師養成研修へ

シドニーのRTTCでのTeacher Training Workshopで非常なインパクトを受け,まさに「洗脳」されて帰ってきた参加者たちは,同じスタイルのWorkshopを日本でも是非開催をということで,1974年12月にWHOの後援,日本医学教育学会と厚生省の主催で第1回の「医学教育者のためのワークショップ」を開催することになった.ワークショップが富士山の裾野にある富士教育研究所で開催されたこともあって,もっぱら「富士研ワークショップ」として広く呼ばれるようになったものである.その後も毎年,おもに12月に厚生省と文部省(第6回以降)の主催で開かれるようになり,日野原先生は第1回ワークショップからずっと皆勤出席をされているという.

ワークショップの中味は,シドニーのRTTC で行われていたカリキュラムプランニングを中軸としたTeacher Training Workshopで,その方式は,全体討議とグループ討議をおりまぜながらテーマごとに順次進行し,テーマに即したプロダクトを作成しながら,参加者自身が全員,直接参加して医学教育について学ぶものである.この方式(WHO方式とも呼ばれる)が有効に機能するためには,参加者人数は20~40名に制限して,寝食ともに同じ研修施設に泊まりこんで7泊8日(後に4泊5日まで短縮)の合宿形式で実施され,文部省枠で大学教員20名,厚生省枠で研修指定病院指導医20名の計40名が参加するスタイルとして40年に渡って開催されてきている.

この富士研ワークショップをさらにコンパクトにしたものが臨床研修指導医養成講習会で,厚生労働省の指定した18時間以上の講習会として2泊3日ないしは,朝から夕方までの丸2日間を使ったスケジュールで実施されており,2004年から始まった新医師臨床研修制度による臨床研修の必修化を受ける形で,新医師臨床研修制度において研修指導医となるためには,厚生労働省の認定したこの講習会に参加して修了証を得ている必要があり,研修指定病院が指定病院の資格を確保するためにも一定数の正規の指導医をそろえていることが必要となるために,指導医確保のためにあちこちで開催されている.

また,同様に富士研ワークショップのコンパクト版として,薬学教育6年制化に伴い実務実習指導薬剤師の養成として,日本薬剤師研修センターが中心に認定実務実習指導薬剤師養成研修も盛んに開催されるようになってきた.

GIO,SBOsによるカリキュラム開発に象徴される行動主義アプローチ教育学

これらの教育専門家養成WSで主題とされてきたのは,GIO,SBOsによるカリキュラム開発であり,これらの考え方は1950~60年代の教育学で発達した行動主義アプローチによる成果に他ならない.

行動主義アプローチの特徴は,心の中の過程自体は把握が難しく測定も困難と考えてブラックボックスに入れてしまい,もっぱら行動に影響する環境と刺激という入力系と,出力系として実際に起きた行動に注目して,行動の予測とコントロールを目指した行動心理学の影響を受けたもので,教育の中心として,教員はどういった環境の中で(教育環境・教育資源),どういった教育的刺激を与えれば(教育方略),どのように望ましい学びとしての変化(教育目標:GIO,SBOs)を導き出せるかについて検討を進めるようなアプローチである.

学習の成果については,教育という刺激を与えることによって起きた望ましい行動のみによって評価される仕組みで,その時にどんな学びが学習者の中で起きていたかという学習のプロセスはブラックボックスに容れて検討の対象としないというようなアプローチの教育学である1.しかし,当然のこととして20世紀の後半になってくると,さまざまな行動主義アプローチ教育学への疑問が生まれてくるようになった.それらは,「学習プロセスの中味は本当にブラックボックスということで不問にしてしまって良いのか?」「講義に対して反応の良い活発なクラスの学生を相手に授業をするのと,何を言っても素通りしてしまいそうな反応の悪い学生を相手に授業をするのとでは,教員と学生との相互作用が違うのではないのか?」「実習グループやチュートリアルのパフォーマンスを見ても,教員の教育的な働きかけだけではなくて,学習者間の相互作用も無視できないのではないか?」「そもそも教員は実験ゲージの外から操作するように学習者の学びをコントロールできるのか?」等といったものである.

行動主義研究から構成主義研究へ

入力系としての教員の教育介入をコントロールし,出力系としての学習者の学習成果の違いを見るような研究手法は,T検定やχ二乗検定などに代表されるような量的研究になじみ深い.しかし,このアプローチでは,そこでどういう学びが実際に学習者の中で起きているかというようなことはあくまでもブラックボックスの中で,そこに迫るには質的研究という研究手法による観察研究が必要となってくる.

こういった教員と学習者が相互作用を経てお互いに影響し変容しながら共同行為として学びを生成していくというプロセスを重視する有りかたを(社会)構成主義的なアプローチと呼び,現代の成人学習理論ではこの立場からの種々の質的研究によって理論構築が進んでいる.

構成主義アプローチから生まれた学習理論は「Apprenticeships in thinking(徒弟主義)」「Reflective Practice(省察的実践)」「Metacognition(メタ認知)」「The zone of proximal development(最近接発達領域)」「Legitimate peripheral participation(正統的周辺参加)」といった,現代の教育研究でホットなテーマになっている概念が多いが,ここでは紙数の関係で名前の紹介のみにさせて頂く.詳しくは医学教育誌に連載の論文を参照頂きたい2

教育目標から教育アウトカムへの流れ:もうひとつの行動主義アプローチの問題点

GIO,SBOsに代表される行動主義アプローチが見直される契機になっているのがアウトカム基盤型教育という考え方の登場である.従来の大学教育の単位単元主義で,それぞれの教員がそれぞれ勝手に教えたいことを教えて,そこで得た単位数が一定の枠組みに沿った数が集まれば卒業認定というスタイルでは,教員はみんな自分の目の前の教育にしか関心がなく,大学として誰が卒業生の学習成果(ラーニングアウトカム)に責任を持つのかということが改めて問い直されるようになってきたのである.

そこで,カリキュラム編成の出発点としてまず大学全体のアウトカム,つまり卒業時点においてどんな医療人を育てたいのかということを明確にして,その目標に向かう各段階・各学年のロードマップを設定して,全教員がそこを目指しながら教育を進める方が望ましい,という考え方に変わってきている.さらには,そのロードマップは単なる目指したい努力目標ではなく,確実にロードマップに基づいて教育し,なおかつ到達を評価しながら次へつなげていけるようなものでなければいけないという考え方である.

世界的にもOECDではこの間,高等教育におけるラーニングアウトカムのフィージビリティ・スタディを行なっている.わが国でも文部科学省の中央教育審議会(いわゆる中教審)が2008(平成20)年の答申で「他の先進国では『何を教えるか』より『何ができるようになるか』(ラーニングアウトカム)を重視した取り組みが進展」しているが,「我が国の大学が掲げる教育研究の目的等は総じて抽象的」であり,「大学は卒業に当たっての学位授与の方針=ディプロマポリシーを具体化・明確化し積極的に公開」するようにと述べられ,それに基づいて各大学はディプロマポリシーを決めて,ホームページにディプロマポリシーを掲載するようになってきている.その後,ディプロマポリシーを達成するためのカリキュラムポリシーを作りなさい,ディプロマポリシーに見合った教育を行えるような入学生選抜を実施するためのアドミッションポリシーを作りなさい,と五月雨的に文部科学省からの指示があって,今はどこの大学のホームページにもこの3つのポリシーが掲示されるようになってきている.ところが,このポリシー作成の時期が五月雨的であったために,それを作成したその時その時の学部長や教務委員長が入れ替わっていたりして,3つのポリシーに一貫性が無いじゃないかということを今度は指摘されるようになってきて,今まさに一貫性のある3つのポリシーの整備が,全ての大学で喫緊の課題となってきているところである.

さらに2012年3月の中教審答申「予測困難な時代において生涯学び続け,主体的に考える力を育成する大学へ」では,ここ5~10年くらいで,大学教員はそれなりに教育改革に取り組むようになってきたのに,「『日本の大学が世界に通用する人材,企業や社会が求めている人材を育てているか』という質問に6割を超える国民が否定的な回答をしているように,いまだ国民は現状に満足できていない」として,「産業界や地域は,高度成長時代においては労働力として均質な人材の供給を求めたが,今は,生涯学ぶ習慣や,主体的に考える力を持ち,予測困難な時代の中で,どんな状況にも対応できる多様な人材を求めており,大学教員はそういった能力を育成することが責務」であると述べている.そのためにはまずは大学教員がいつまでも従来型の教育に固執するのではなく「予測困難な時代の」教育の改革に対応しなさいということである.型にはまった卒業生ではなく,状況変化に柔軟な対応が可能な卒業生を養成するためには,講義室でただ座って講義を聞くような受身の学習ではなく,参加型の問題解決型・課題解決型の能動的学習(active learning)で考える力を養うことが重要である.また,学習成果(learning outcome)を大事にして,そのためにルーブリックと言われるようなものを使って進捗状況をきちんと評価しなさい,ということも述べられている.

さらには,高大接続連携ということで,高校と大学の教育改革を同時に進めるという大胆な教育改革プランも進行中である.従来,高校の教育改革を進めようとしても,今の大学受験のありようが変わらなければ高校の教育改革は難しいと言われる.また,大学の教育改革を進めようとすると,今の高校教育の受験中心の教育のありようが変わらなければ大学の教育改革は難しいと言われる.だからこそ,日本の高等教育を高校と大学同時に改革するというのである.具体的にはセンター試験を廃止し,2020年から新たな「基礎学力テスト」「学力評価テスト」を導入する.既に2013年度高校入学者から,高校教育では新たな学習指導要領で,①従来型の知識・技能教育に加えて,②思考力・判断力・表現力の能力や,③主体的学習態度の育成という3つの学力をそれぞれ育てる教育を実施しているのだから,その教育を受けた学生を新入生として迎える大学側もそれ相応の改革を実施しなさいということである.大学は各大学のディプロマ・ポリシーに基づき適切なアドミッション・ポリシーを確立し,これら3つの能力を評価できるような入試改革を実施し,入学後の学習の進捗状況もアウトカムとの関係で着実にモニタリングできるようなシステムを確立すべきであるというのだ.

既に薬学分野においては,薬学教育モデルコアカリキュラムの改訂版で「薬剤師として求められる基本的資質」というアウトカムが作られており,このアウトカムに基づく教育がスタートしている状況である.

グローバル化の中で求められる医学教育専門家の養成

医学教育のグローバル化ということも,医学教育研究を担う教育専門家の養成を求めてきている.医学教育の領域では2023年問題などとも言われているのだが,2023年以降,アメリカ以外の医学部卒業生(Foreign Medical Graduates)がアメリカで医師免許を取るための試験ECFMG(Educational Commission for Foreign Medical Graduates)の受験資格として,卒業校がWHOの下部組織のWFME(World Federation for Medical Education,世界医学教育連合)が決めたグローバル・スタンダードの認証を受けた医科大学でなければならないこととなり,残念ながら現状では日本の医学校はまだ,このグローバル・スタンダードに見合う認証を受けていないので,その対応が問題になっているのである.

そしてこのWFMEのグローバル・スタンダードの中で医学教育専門家へのアクセスや活用,教育専門家による教育評価,教職員による教育研究の必要性や医学教育分野での最新研究知見への注目などが謳われているのである.具体的には評価項目の6.5として「教育の専門的立場」のパートがあり,その中で基本的水準(必ず満たすべき基準)として,「医科大学・医学部は必要な時に教育専門家へアクセスできなければならない(B 6.5.1)」「医科大学・医学部はカリキュラム開発(B 6.5.2)と指導および評価方法の開発(B 6.5.3)において教育専門家の利用に関する方針を策定し履行しなければならない」とされており,質的向上のための水準(目指すべき基準)として「医科大学・医学部は教職員の教育能力向上において学内外の教育専門家が実際に活用されていること示すべきである(Q 6.5.1)」「医科大学・医学部は教育専門家の教育評価や医学教育分野の研究における最新の知見に注意を払うべきである(Q 6.5.2)」「医科大学・医学部は教職員は教育的な研究を遂行すべきである(Q 6.5.3)」と評価基準の中に教育専門家の活用や配置,教育研究への取り組みを求めるような内容が組み込まれているのである.

国際的な医学教育専門家の養成に関しては,専門職業人大学院としてマスターコースで医学教育専門家養成をするのがグローバルスタンダードとなっている.Tekian and Harrisによる国際調査によると,1996年の段階で北米3(イリノイ大学シカゴ校,南カリフォルニア大学,カルガリー大学),欧州3(カーディフ大学,ダンディー大学,マーストリヒト大学),豪州1(ニュー・サウスウエールズ大学)の7校にしかなかった医学教育大学院修士課程は76校にまで増えており,既にアジアにおいても13校の修士課程が作られているという3

こういった教育専門家養成をめぐる国際的な動向を受ける形で,日本医学教育学会では2014年から学会認定医学教育専門家資格制度がスタートしており,既に50名以上の認定専門家が生まれて活躍している.また,2010年以降,文部科学省から医学教育の共同利用拠点としての役割を与えられている筆者の所属する岐阜大学医学教育開発研究センター(MEDC)でも,60回を超える「医学教育セミナーとワークショップ」においてのべ6000人以上の参加者を集めてきた.また2015年からは,一ランク上の学びを得るためのフェローシッププログラムを設立して,現在のべ50名が履修中で,8名のフェロ-シップ認定者が誕生しており,さらなる医学教育の学識を備えた専門家養成に取り組むようになっている.

発表内容に関連し,開示すべき利益相反はない.

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