論文ID: 2024-010
近畿地区は,実務実習において「大学―薬局―病院の連携を図り,一貫性を確保し学修効果の高い実習を行う」ため,近畿地区の15薬系大学と府県薬剤師会及び病院薬剤師会が協力の下,病院と薬局のグループを構築している.大阪医科薬科大学の担当地区の1つである大阪市北区では,北野病院,済生会中津病院,住友病院,桜橋渡辺病院と近隣薬局がそれぞれ1施設完結型グループを組み22週間でコアカリキュラムの全ての要件を達成できるようにしている.そして,北区薬剤師会が4グループの実務実習内容の充実と均等化を調整している.その充実内容として,各病院の専門性をより深く習得する参加体験型学習として病院間で相互交換実習を行った,又各期の終了に「北区合同発表会」を行い大学・薬局・病院が学生の到達度を共有するなどに取り組んだ事例を紹介し,地域一体となって学生と共に指導する側も成長できる実務実習の方向性について議論を深めることができた.
The Kinki region has established a group of hospitals and pharmacies in cooperation with 15 pharmaceutical universities, prefectural pharmacists’ associations, and hospital pharmacists’ associations in the Kinki region in order to “promote cooperation between universities, pharmacies, and hospitals, ensure consistency, and provide training with high learning effectiveness” in practical training. In Kita-ku, Osaka City, one of the districts served by Osaka Medical and Pharmaceutical University, Kitano Hospital, Saiseikai Nakatsu Hospital, Sumitomo Hospital, Sakurabashi Watanabe Hospital, and neighboring pharmacies have each formed one facility-complete group to achieve all requirements of the core curriculum in 22 weeks. The Kita-ku Pharmaceutical Association then coordinates the enhancement and equalization of the practical training content of the four groups. As part of the enrichment of the program, we introduced examples of mutual exchange training between hospitals as a participatory experiential learning program for students to learn more deeply about the expertise of each hospital, and the “Kita-ku Joint Presentation Meeting” held at the end of each term for universities, pharmacies, and hospitals to share the students’ achievement levels, which led to deeper discussions on the direction of practical training that would unite the community and help students and their instructors grow.
近畿地区は,実務実習において「大学―薬局―病院の連携を図り,一貫性を確保し学修効果の高い実習を行う」ため,近畿地区の15薬系大学と府県薬剤師会及び病院薬剤師会が協力の下,グループ化を構築のうえ,施設連携を強化し薬局実習・病院実習において22週間の一貫性を確保し学修効果の高い実習を目指している1).
その連携に関して,グループ内の連携だけでなく,グループ間で連携したケース,その実習を行った学生の声なども紹介し,今後の実務実習の発展について考えていく機会になればと考える.
近畿地区調整機構が近畿地区全薬系大学の実習生の実習施設調整や実習を指導する薬剤師の養成などを取りまとめている.そして,各実習施設はそれぞれ工夫を凝らし実務実習実施計画を立て,大学と実習受入れ施設となる薬局や病院が協力し,臨床の場での実務実習の円滑な実施に向け様々な取り組みを行っている.
大阪医科薬科大学は,大阪府内の北部地域と大阪市内の北部,西部を主に担当している.その地区のグループ毎に施設間の連携を強化し,学修効果の高い実習を目指すため,実習開始当初に「グループ協議会」を各グループ単位で薬局・病院の22週間の連携や実習実施計画などを話し合い,学修効果の高い実習を多くの学生が体験できる事を検討している.また,実習開始以後は,受け入れ施設の薬局から次の病院へ「連絡引継ぎ会」として,グループ内の薬局で実習した学生の到達度情報などを次に実習する病院へ実習状況なども含め引継ぎ,22週間の一貫性を構築する事としている2).
大阪医科薬科大学が担当する地区の1つである大阪市内北区の事例を紹介する.大阪市内北区では,北野病院,済生会中津病院,住友病院,桜橋渡辺病院の各病院と近隣薬局が1施設完結型のグループを構築し,22週間を通しコアカリで求めている全てが到達できるようにしている.そして,北区薬剤師会が4グループの薬局実務実習内容の充実と均等化を調整している(図1).
大阪市内(北区)での実習施設連携のイメージ
その主な「薬局間連携」として,グループ内の学校薬剤師が他の薬局で実習している学生も一緒に学校薬剤師実習に連れて行く,別の薬局ではOTC薬について合同研修するなどの機会を設けている.
「薬局と病院の連携」では,引継ぎ会を兼ねて,「北区実務実習合同発表会」を毎期の終了時に行っている.
そして,1施設完結型を基本としつつも,それぞれの病院の特徴を活かし,より専門性を習得するための参加体験型実習として大学が主導的役割を果たし,済生会中津病院と桜橋渡辺病院の相互交換実習を新たに開始した.
この相互交換実習は,2019年度より大阪医科薬科大学病院で5週間と近隣の連携病院で5週間,精神科専門病院で1週間の連携実習を実施している事を参考とした.
「桜橋渡辺病院」は大阪梅田の中心に位置する循環器専門病院で合併症をお持ちの患者さんも多く,色々な疾患の実習を行っており,「済生会中津病院」は急性期から回復期までの総合的な地域医療支援病院である.
この両病院の特徴を活かし,より深く専門性を学ぶための参加体験型実習として,それぞれの病院長宛に書面にて,「委託書」を提出,了承のうえ,「相互交換実習」を行い,済生会中津病院の学生は,桜橋渡辺病院に2日間行きアブレーション手術などを見学し,循環器に特化した治療を実習する.桜橋渡辺病院の学生は,大阪府がん拠点病院である済生会中津病院で多くの癌腫について学び,抗がん剤の無菌調製などの実習も行っている(図2).
北区における交換実習
実際に,交換実習を行った学生の声として,済生会中津病院の実習生は,桜橋渡辺病院で循環器系の専門性をより深く学べて刺激を受けた.その後,済生会中津病院に戻って実習をする中で循環器系に興味を持ち,成果発表のテーマも循環器系にした.また,アブレーション手術を複数見学でき,特徴的な機器を目の当たりにするなど多くの体験ができた.
桜橋渡辺病院の実習生は,済生会中津病院で抗がん剤の無菌調製をはじめ,多くの癌腫について深く学べた.もう少し長く学びたい気持ちもある,などの声があった.
なお,学生の声を調査するにあたっては,学生へ説明後,個人が特定されないように匿名化で行い,倫理的配慮を実施している.
今後も学生の声を聞き,より良い連携を構築していきたいと考える.
この交換実習などの経験を踏まえ,今後,薬局実習では,1期で体験機会が少ない学校薬剤師などについて,同じグループ内で2期病院実習を行っている期間に学校薬剤師実習に行く機会を実施計画できるか検討する.
また,病院間での交換実習において,今後,相互に受け入れ人数が変わってきた場合,北区内の他の病院との協力連携体制なども検討する必要がある.
今後も学生の意見を踏まえ,より充実した実務実習ができるよう,指導する側も成長できる実務実習の方向性について議論を深めていきたい.
発表内容に関連し,開示すべき利益相反はない.