日本植物病理学会報
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原著
コロニーダイレクトのマルチプレックスPCRによる植物病原性Rhizobium属細菌(旧Agrobacterium属細菌)のプラスミド型別
澤田 宏之須崎 浩一川口 章
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2016 年 82 巻 2 号 p. 116-124

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抄録

Rhizobium属の既知菌種のうち,植物病原菌をメンバーとして含んでいるのは以下の6つである:R. radiobacter species complex(R. nepotumR. pusenseを含む),R. rhizogenesR. vitisR. rubiR. larrymooreiR. skierniewicense.これら6菌種のメンバーは,病原性に関する状態(pathogenic state)に基づいて,「根頭がんしゅ病菌(Tiプラスミド保有株),毛根病菌(Riプラスミド保有株),非病原菌(いずれの病原性プラスミドも保持していない株)」の3つに類別できる.本研究では,コロニーダイレクトのもとで実施するマルチプレックスPCRを利用して,被検菌における病原性プラスミドの保有状況を明らかにするための手法(プラスミド型別法)の開発を試みた.そのためにまず,virCオペロンを標的とした「病原性プラスミドのユニバーサルプライマー」と,rolCを標的とした「Riプラスミド特異的プライマー」を設計した.また,16S rRNA遺伝子(16S rDNA)を内在性コントロール遺伝子(内部標準)として選び,それを標的としたプライマーセットを反応に組み込むことによって,PCRの成否が容易に判定できるようにした.そして,これらを組み合わせて実験系を構築した上で,その反応条件を至適化した.最後に,この実験系のプラスミド型別法としての信頼性を証明するために,合計383株の植物病原性Rhizobium属細菌や近縁菌を供試して検証実験を行った.その結果,供試したすべての病原菌から,内部標準としての16S rDNA由来のシグナル(780~784 bp)とともに,各pathogenic stateに特異的な以下の増幅産物が安定して得られた:根頭がんしゅ病菌(virC1由来の278 bp);毛根病菌(virC1由来の278 bpとrolC由来の438 bp).一方,非病原菌からは16S rDNA由来のシグナルのみが認められた.以上より,本法は植物病原性Rhizobium属細菌を標的とした簡便・迅速なプラスミド型別法としてきわめて実用性が高く,根頭がんしゅ病や毛根病を対象とした研究や防除の現場において,作業効率の向上に大きく貢献すると考えられた.

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© 2016 日本植物病理学会
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