日本植物病理学会報
Online ISSN : 1882-0484
Print ISSN : 0031-9473
ISSN-L : 0031-9473
原著
イチジクとイヌビワの種間交雑体「励広台1号」におけるイチジク株枯病抵抗性メカニズムの解明:qPCRを用いたイチジク株枯病菌密度の「蓬莱柿」との比較
白上 典彦森田 剛成軸丸 祥大須川 瞬薬師寺 博
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 88 巻 2 号 p. 91-97

詳細
抄録

「励広台1号」は,イチジク栽培品種と近縁野生種であるイヌビワとの種間交雑体から得られた系統にイチジク栽培系統を戻し交雑したBC1系統群から選抜された品種である.「励広台1号」はイチジク株枯病に対する抵抗性を有し,イチジク株枯病抵抗性台木としての利用が期待されている.本病抵抗性のメカニズム解明の端緒として,有傷接種したイチジク株枯病菌の「励広台1号」樹体内での伸展を,qPCRを用いて調査した.イチジクの主要な栽培品種である「蓬莱柿」を対照区に用いた.接種後1~9の各日,30日,90日および180日において,接種部位,接種部位より2 cm上部,接種部位より4 cm上部からサンプリングを行った.qPCRの結果,「励広台1号」におけるイチジク株枯病菌のDNA検出量は「蓬莱柿」と比較して抑えられた.接種後29日目には「蓬莱柿」の枯死率は100%となったが,接種後180日までの期間中「励広台1号」の枯死個体は確認されなかった.これらの結果は,「励広台1号」がイチジク株枯病菌の移動と増殖を防ぐ抵抗性メカニズムを有していることを示唆している.

著者関連情報
© 2022 日本植物病理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top