日本植物病理学会報
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稻胡麻葉枯病に對する稻の感受性に及ぼす硫酸銅の影響に就きて
福島 茂
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1942 年 11 巻 4 号 p. 162-171

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抄録

1. 本論文に於ては,水耕液又はポット内の土壤中に混入せる硫酸銅の,稻の胡麻葉枯病に對する感受性に及ぼす影響に就きての實驗結果を記載せり。
2. 水耕試驗に於ける稻の發育は, 100萬分の1 mol.區最良にして, 50萬分の1 mol.區,標準區, 10萬分の1 mol.區の順位に劣りたり。
3. 水耕による稻の生育程度は或程度迄の微量なる硫酸銅混入に因り,却つて促進せしめらるるものと見做し得るが如きも,その程度を過ぐれば勿論有害なり。
4. 水耕により育成したる稻苗の胡麻葉枯病に對する感受性は,標準區最大にして,添加硫酸銅の濃度に逆比的に減少する傾向あり。
5. ポット試驗に於て,土壤に微量の硫酸銅を混入せるものの稻の草丈及び葉數は,標準區の夫に勝るも,肉眼的には差異を認め難し。
6. ポット試驗に於ても,硫酸銅を注入せる土壤に生育せる稻苗は,標準區の夫に比し,例外なしに發病少なく,草丈100 cm當りの病斑數は前者が後者の約半數なりき。
7. ポット試驗に於ける稻苗の煎汁に胡麻葉枯病菌を培養したるに,標準區の稻苗煎汁に於て,僅少ながら常に硫酸銅區の夫に於けるよりも發育よく,菌絲の乾燥重量に於て,平均1.262倍を示せり。
8. 硫酸銅が,胡麻葉枯病に對する稻の感受性を減少せしむる理由に就きて,聊か考察を試みたれども,未だ解決を見るに至らず。

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