日本植物病理学会報
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ジャガイモバイラスの分類に關する研究
II. 紅丸ジャガイモの漣葉性モザイク病バイラスに就いて
明日山 秀文小室 康雄
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1951 年 15 巻 2 号 p. 49-54

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抄録

紅丸ジャガイモの漣葉性モザイク病に就いて昭和21年10月より昭和23年7月迄に行つた實驗結果である。
1) 原寄主上に於ける病徴は高温になると不明瞭になることもあるが,大體全生育期間を通じ生長點附近の6~7枚の葉にmottleが見られ,葉縁は波状を呈し,所謂crinkle mosaicの病徴を示した。streakは全期間を通じ一度も認められなかつた。
2) 含まれるvirusの分析接種試驗の結果,牙蟲によつては運ばれないが汁液によつて運ばれるX virusと,汁液・牙蟲兩者によつて運ばれるY virusとの2種のvirusが重複して含まれていることを知つた。
3) 分離したX virus, Y virusの兩種又はY virusだけを外觀健全な紅丸ジヤガイモに接種すると原寄主と同樣の病徴を呈し,これよりこの兩virusが少くとも病原virusである事が明らかになつた。
4) 外觀健全な紅丸ジヤガイモは男爵ジヤガイモと同樣にX virusのmild mottle strainを含むと思われる。
5) X+Y virus, X virus, Y virusをそれぞれトルコタバコ,ハナタバコ,グルチノザ,トマト,イヌホウズキ,ペチュニア,Datura,トウガラシ,ナス等に接種しその病徴を調べた。後の3種以外の植物はX virus, Y virus兩者に感染した。Datura,シシトウガラシ,ナスはX virusには感染するがY virusには感染しないようである。
6) 長期貯藏及び收穫直後の塊莖よりその汁液によつて接種試驗を行つた所Y virusはX virusよりも感染率は低い。けれども塊莖汁液によつて傳搬されることが明らかになつた。
7) 本實驗で分離されたX virusの耐熱性は70~75℃,耐稀釋性は100,000倍,汁液中での傳染力持續期間は72日以上であり,松風濾過板L3は毒力を減するが通過した。
Y virusの耐熱性は55~60℃,耐稀釋性500~1,000倍,汁液中での傳染力持續期間1~2日で,松風濾過板L3は通過しなかつた。

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