日本植物病理学会報
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キユウリ・モザイク病バイラスに関する研究
I. キユウリに於ける発生
小室 康雄明日山 秀文
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1954 年 19 巻 1-2 号 p. 18-24

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抄録

1). 1950年東京世田谷で調査したキユウリ・モザイク病株はその葉に chlorotic spot, mosaic 等の病徴を示すが, 果実には明瞭なモザイク症状を現わさず, また疣状突起を生ずることもなかつた。壊疽は葉柄, 葉片, 茎等を通じ全く観察されなかつた。
2). 病原は汁液接種により容易に伝搬される他, モモアカアブラムシ, ワタアブラムシによつても伝搬可能である。ウリハムシによつては媒介されなかつた。ネナシカズラによる伝搬も陽性の結果を得たが種子伝染は実験の範囲内に於いては認められなかつた。
3). 13科34種の植物に汁液接種を行つた所11科26種に感染し, 広い寄主範囲を持つバイラスであることを知つた。この中, キユウリ, メロン, ヒヤクニチソウ, タバコ, トマト, ホウレンソウ, トウモロコシ, ツユクサ等は何れも全身感染し, シロウリ, スイカ, ササゲ (黒種三尺), ソラマメ, エンドウ, ツルナ,ゴマ等は local lesion の病徴を示した。
4). 本バイラスの物理的性質については3回実験したがその間に若干の差が認められた。それらを綜合すると, 病原性を保有する稀釈度, 耐熱度, 保存日数はそれぞれ1000∼5000倍, 10°, 1∼3日であつた。
5). 寄主範囲, 病徴, 伝染方法, 物理的性質等を綜合し, 本バイラスは, いわゆる cucumber mosaic virus 即ち Smith の Cucumis virus 1, Holmes の Marmor cucumeris に該当するものと考える。

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