1954 年 19 巻 1-2 号 p. 53-57
純化せるTMVにX線を照射し, それがこのバイラスの病原性及び抗元性に与える影響について研究した。バイラスの感染力は Nicotiana glutinosa への半葉法による接種試験で調べ, 抗元性のテストには沈降反応 (混合法) を用いた。
X線照射によつて病原性を失つたバイラスは依然強い抗元性を有し, 照射線量の増加に伴つて抗元性が強くなる傾向が認められた。
X線照射によるTMVの障害量と照射線量との間には指数函数的関係が成立する。従つて一方に活性バイラス残存率の対数をとり, 他方へ照射線量をとつて半対数グラフを作ると, TMVのX線による障害曲線は大体単純な直線となつた。従つてこれらの結果は ionizing radiation によるバイラスの不活性化は single ionization によるという説と一致する様に思われる。
X線照射によるTMV障害曲線は照射時のTMV濃度が低いと, その傾斜はより急になつた。これらの曲線より得られたTMVの大凡の不活性化線量 (37%線量) は照射時のTMV濃度0.2%の場合は28×104r であり0.02%の時は2×104rであつた。