日本植物病理学会報
Online ISSN : 1882-0484
Print ISSN : 0031-9473
ISSN-L : 0031-9473
稲熱病のワクチン療法に関する研究
第10報 植物生長ホルモンの検出
渡邊 龍雄
著者情報
ジャーナル フリー

1957 年 22 巻 3 号 p. 143-147

詳細
抄録

1. 本論文は,稲熱病(Piricularia oryzae Cavara)ドライワクチンB中に植物生長ホルモンの存在を確めるために行つた実験結果を記載した。2. ドライワクチンBの各種濃度及び標準区として蒸溜水,2・4-D, MCPを用い,ドライワクチンBの0.5%の濃度に,植物生長ホルモンの存在をWentによる豌豆試験法により,確め得た。3. ドライワクチンBのクロロフォルム及びエーテル抽出液に,植物生長ホルモン(第1.2図)の存在をWentによる豌豆試験法により確め得た。3. 大根及び陸稲の砂耕栽培法(ドライワクチンBを添加)により,大根及び陸稲の根と茎の生長比(第1表),大根の肥大(第3図)及びくびれ現象から,ドライワクチンB中に植物生長ホルモンの存在を明らかにした。5. 植物生長ホルモンの種類の検出にペーパークロマトグラフを用い,βインドール醋酸類似のものであることが分つた(第2.3表)。6. かかる植物生長ホルモンが稲熱病菌の培養中の代謝産物として生産され,これがドライワクチンの種子処理により種子中に吸収され,稲種子の胚組織の細胞を刺戟し,それによつて種子の発芽及び発芽後の生育をよくし,発病率を低下し,収量を増したものと考えられる。

著者関連情報
© 日本植物病理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top