日本植物病理学会報
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水稲胡麻葉枯病々斑周縁組織の澱粉蓄積機構
1. 病斑周縁組織の澱粉蓄積状態の観察
赤井 重恭田中 寛康野口 喜久子
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1958 年 23 巻 3 号 p. 111-116

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抄録

1. 水稲胡麻葉枯病々斑周縁組織の澱粉蓄積状態を澱粉蓄積部面積及びその濃度について観察した。
2. 接種後24時間では病斑の周縁に澱粉の消失部分が認められ,やがてその周縁に澱粉が蓄積し始める。澱粉蓄積量は病状の進展と共に増大し,蓄積面積は接種後5日目頃に略一定となる。しかし濃度は更に増大する。これらのことから寄主細胞には感染の極く初期から大きな生理異常が起つているものと考えられる。
3. 早朝に減少した澱粉が日照量増加と共に急激に増大し,その後夕刻迄は略一定の状態を保つているが,濃度は夕刻に至つて急激に増加する。雨天では澱粉蓄積は減少,もしくは消失する。また24時間の暗処理でも消失する。以上のことから蓄積澱粉は同化澱粉であると思われる。
4. -N及び+Mn区では澱粉蓄積量は増大し,又秋落水稲でも増大する。概して栄養状態異常の場合,澱粉蓄積が大きい。
5. 澱粉蓄積の原因として,澱粉合成作用の促進,澱粉分解作用の減退,周辺健全部からの移行,透過性低下による流転阻害等が考えられ,蓄積機構の解明にはこれらについて追及する必要あるものと考える。

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