日本植物病理学会報
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アンチピリクリンの稲熱病菌に対する抗菌作用
第1報 Antipiriculin の稲熱病菌各生育時期に対する阻害作用
原田 雄二郎熊部 潔香川 恒雄佐藤 庸夫
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1959 年 24 巻 5 号 p. 247-254

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抄録

稲熱病菌の各生育時期について, 抗稲熱病薬剤の作用を比較した。
(1) 胞子発芽阻害 適当な温度, 水分の条件下で P. oryzae の発芽率は6時間目で20∼30%, 24時間目で80∼90%である。発芽率の少ない6時間目では, いずれの薬剤もよく胞子の発芽を抑制し, 薬効が大きく, 24時間目では多少抑制力が落ちた。特にPMAは抑制力が大で, AP, BMの結晶は水への溶解性が低いため阻止効果は弱いが, 乳剤にするとPMAにほとんど等しい抑制作用を示した。
(2) 菌糸伸長阻害 培地中に生育しつつある P. oryzae の菌糸に薬剤を添加すると, かなり激しい生育阻害を示した。特に対数的増殖期にその阻止作用は著しい。AP乳剤が最も阻止作用が大で, 菌体増殖が定常期に達した後でも溶菌作用を示した。PMAは初期に抑制効果を示したのみである。AP, BMを結晶状で供試するときは阻止作用は弱く, 製剤形態を決定するのに甚だ有効な示唆が得られた。
(3) 胞子着生阻害 基生菌糸の生育も十分でない初期には阻止作用力が大きく, 菌糸生育阻害と二次的に胞子の着生も阻害されるが, 基生菌糸が十分生育した後に薬剤を散布すると, 胞子の着生は阻害されない。PMAに比較し, APおよびBMが菌糸の生育阻害力が強いためか, 胞子の着生阻害力も優るように思われた。
(4) 生育最小阻止濃度 寒天稀釈法によればPMAが最も小さく, AP乳剤がこれに次いだ。AP, BMの結晶は水への溶解度が少なく (2∼5mcg/mlは溶ける。Emulsion の M.I.C. は1mcg/mlである), 従つて多量加えないと効果がない。
(5) すなわち水不溶性の抗カビ性抗生物質APおよびBMは, 水に懸濁するような単純な使用方法では, 稲熱病菌の各生育時期に阻害作用を示すことが弱い。これを適当な乳化液として供試すると, PMAの如き水溶性薬剤に比較して遜色なく生育阻害作用を示した。

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