日本植物病理学会報
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ダイコンモザイク病ウイルスに関する研究
I. ダイコンPウイルスの諸性質と形態
栃原 比呂志
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1959 年 24 巻 5 号 p. 287-295

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抄録

東京附近のダイコンモザイク症状株から分離したPウイルス (主として千葉県松戸で採集した分離株P0を用いた) について実験を行い, 次の結果を得た。
(1) 寄主範囲はアブラナ科植物の他, ペチュニア, シュンギク, ホウレンソウ, アカザ, センニチコウ等にも感染するが, タバコ, トマト, キュウリ, ソラマメ等には病原性が認められなかつた。しかしCMVと混合接種を行うと N. glutinosa に感染が認められた。耐熱性は55∼60°C10分, 耐稀釈性は2,000∼5,000倍, 耐保存性は25∼26°Cで4∼7日であつた。
(2) Pウイルスはモモアカアブラムシにより容易に伝搬された。ただしコカブに継代接種して保存されたP0だけはモモアカアブラムシによつて伝搬されなかつた。
(3) (凍結処理)-硫安による塩析-分劃遠心-(クロロホルム処理) の操作によりウイルスを純化した。ウイルス粒子とみなされるものはほぼ (12∼13)× (650∼700)mμの紐状で, 100mlの罹病コカブ汁液からほぼ10∼15mgの純化標品が得られた。この純化標品は乾燥重量比で (2∼3)×107倍に稀釈して, なお接種コカブの20%が発病した。
(4) 罹病コカブ葉汁液を凍結乾燥保存したものは23カ月を経ても高い病原性を保持していた。

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