日本植物病理学会報
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抗生物質による稲熱病防除に関する研究
(その2) Blasticidin S の葉稲熱病治療効果について
見里 朝正石井 至浅川 勝沖本 陽一郎福永 一夫
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1959 年 24 巻 5 号 p. 302-306

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抄録

(1) Blasticidin S は稲熱病菌胞子の発芽ならびに形成に対し酢酸フェニール水銀とほぼ同程度の阻害効果を示した。また菌糸生育に対しては酢酸フェニール水銀に優る著しい阻害効果を示した。但し寒天培地中では稲熱病菌の生育を阻止するのに Blasticidin S は酢酸フェニール水銀よりも多量の薬量を必要とした。寒天培地中では Blasticidin S の効果は低下すると思われる。
(2) 植物体中の Blasticidin S はトマト葉かび病菌を被検菌とした薄層検定法により0.1μg/mlの濃度まで定量することができた。
(3) 稲葉上では日数の経過とともに次第に抗菌力価は低下した。また稲苗の地際部の茎に軟膏を塗布した後24時間以内に上部の茎葉に生体重1g当り30μg前後の浸透・移行量がみられた。
(4) 温室内稲苗接種試験で Blasticidin S は稲熱病菌接種前に散布された場合にはその葉稲熱病防除効果は酢酸フェニール水銀に劣つたが, 接種後に散布した場合には酢酸フェニール水銀に優る治療効果を示した。これは Blasticidin S が本菌菌糸に対し著しい生育阻害効果を有するので葉上で病斑の進展が阻止されるためと思われる。

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