日本植物病理学会報
Online ISSN : 1882-0484
Print ISSN : 0031-9473
ISSN-L : 0031-9473
イネ胡麻葉枯病菌の生化学的研究 (第6報)
還元剤によるイネの抵抗性の低下について
奥 八郎
著者情報
ジャーナル フリー

1960 年 25 巻 2 号 p. 92-98_1

詳細
抄録

イネ胡麻葉枯病菌をイネの葉鞘に接種する場合, 胞子懸濁液にアスコルビン酸あるいはグルタチオンを加えておくと病害感受性を増加する。本実験はこの原因解明のために行つたものである。イネと胡麻葉枯病菌の相互反応の結果イネ葉には phytoalexin 様物質が生産されるが, このものはアスコルビン酸, グルタチオンによつて不活性化されないし, そのような還元剤の存在は phytoalexin の生産を阻害しないので, phytoalexin は上記の原因ではない。
胡麻葉枯病菌を接種した葉鞘の侵入初期では, 細胞は種々のrH指示薬で酸化的な色調に染色せられ, 発芽管の寄主に付着した部分が特に濃く染まる。また抵抗性の亀治の場合, 接種初期においても侵害細胞はメチレンブルーで緑色に染まる。罹病性の旭では緑色の部分が少なく, 大部分が青色に染まる。以上の結果から, 菌侵害部細胞(膜)に存在する物質が菌の酸化酵素によつて酸化された物質, 恐らくはキノンがアスコルビン酸やグルタチオンで還元あるいは不活性化され, これが菌の侵入に対する寄主の抵抗性を弱めているものと推定される。換言すれば, イネの胡麻葉枯病菌の侵入に対する抵抗性の1部には菌の酸化酵素の活性が関係していると思われる。

著者関連情報
© 日本植物病理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top