1. イネ萎縮病ウイルスのツマグロヨコバイ体内での潜伏期は, 18°Cでは, 短かきは8∼12日, 長きは33∼37日であつた。13°Cでは42日後にもヨコバイは感染力をもつようにならなかつた。本葉1葉期のイネに接種した際のウイルス潜伏期は, 18°Cでは短かきは11日, 長きは22日であつた。
2. ツマグロヨコバイのウイルス伝播能力は産地によつて差が認められた。千葉県産ツマグロヨコバイは滋賀県産および秋田県産ヨコバイよりも, このウイルスを媒介しやすい。滋賀および秋田県産ヨコバイも腹部にウイルス液を注射すれば比較的感染しやすい。
3. ツマグロヨコバイがウイルスを吸収後15日目から体内にウイルスを検出することができた。また体内のウイルス濃度は15∼20日目に急速に高くなる。保毒虫の頭胸部と腹部におけるウイルス濃度は同程度である。
4. 罹病イネ体内のウイルス濃度は接種後40日前後が最も高い。接種後40日目の罹病イネの地上茎葉部のウイルスの稀釈限度は10-3であり, 根部のそれは10-2であつて, 地上部の方が濃度が高い。罹病葉の黄緑色部のウイルス濃度は著しく高く, 緑色部はきわめて低かつた。黄緑色部の稀釈限度は10-4であつた。罹病ヒエのウイルス濃度は低く, 稀釈限度は10-2であつた。
5. 保毒虫磨砕汁液 (1:100) を無毒ヨコバイに注射し, 連続4代継代させたが, これらの虫の磨砕液が感染力をもつていた。