日本植物病理学会報
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ダイコンモザイク病ウイルスに関する研究
V. ダイコンRウイルスの諸性質
栃原 比呂志
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1963 年 28 巻 1 号 p. 31-39

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抄録

ダイコンRウイルス (RRV) (分離系宮原5 (R) と倉吉2 (R) とを供試) の寄主範囲, 物理的性質, 純化, および電子顕微鏡による観察を行なつた。比較のためダイコンPウイルス (RPV) (分離系P0 (P) と筑後10 (P) とを供試) も用いた。
1. 宮原5 (R) はタバコとソラマメの接種葉に local lesion を生ずる点を除けば, 寄主範囲はP0(P) とほぼ同じであつた。耐熱性は50∼55°C 10分, 耐稀釈性は1:1,000∼1:10,000, 耐保存性は25°Cで2∼3日であつた。
2. RPVの純化と同様な操作によつてRRVの純化を試みたところ, 直径12∼13mμの球状粒子と, 少数の幅が12∼13mμで長短さまざまの紐状粒子とが観察された。しかしRPVその他のカブモザイクウイルス群に属する諸ウイルスで見られている650∼750mμの長さの粒子はごく少数しか見られなかつた。この標品の紫外線吸収は260mμと280mμとのいずれにも吸収の山がみられず, 260mμ付近に高原状を示す吸収曲線を示した。これと異なりRPVの吸収曲線は260mμに吸収の山がみられ, TMVに似た吸収曲線を示した。
3. 罹病コカブ葉汁液の病原性は, 多くの場合RPVよりRRVが低かつた。しかし補体結合反応試験の結果は両者で大きくは異ならないことを示した。
4. 直径12∼13mμの球状粒子は, おそらく長いウイルス粒子が分割されてできたもので, 抗原性は保たれているが, 病原性は失われているのではないかと考える。RRV罹病コカブ葉の粗汁液を用いて沈降反応試験を行なうと, RPVと異なり球状ウイルスが示す粉状の沈殿物を生ずることからみて, 粗汁液中ですでに多くの球状粒子が存在するものと思われる。
5. モモアカアブラムシは罹病コカブから健全ダイコンにRRVを容易に伝搬した。
6. 罹病コカブ汁液を凍結乾燥保存したものは31カ月を経ても病原性を保持していた。

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