日本植物病理学会報
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わが国におけるトマト条斑病の病原ウイルス
小室 康雄
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1963 年 28 巻 1 号 p. 40-48_1

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抄録

1. わが国に発生しているトマト条斑病株にどんな種類の病原ウイルスが含まれているかを明らかにする目的で行なつた実験である。1949年から1961年に至る間に, 主として関東地方を中心に採集した37株をそれぞれ数種検定植物に汁液接種してウイルスの種類を判定した。その結果, 25株 (67%) からはTMVが, 9株 (24%) からはTMVとCMVが重複して分離された。TMVあるいはCMVがPXVと重複している株は各1株ずつ得られた。またCMV単独の株も1株あつた。
2. TMVの分離された25株中, 14株はトマトに汁液接種して条斑病の病徴再現に成功したが, 11株は病徴再現に成功しなかつた。またCMVの単独で得られたものも, トマトに接種して病徴再現に成功しなかつた。TMVが単独で分離された25株中, トマトに病徴再現のできた14分離系は, すべてタバコに local lesion をつくるものであり, 病徴再現のできなかつた11分離系中5株はタバコに local lesion をつくるもの, 6株はTMVの普通系であつた。
3. タバコに local lesion をつくる分離系は数種植物に対する汁液接種, TMV普通系との交叉免疫接種, TMV普通系抗血清との凝集反応, アブラムシによる伝搬試験および耐熱性などについての試験結果から, Ainsworth (1933), Smith (1957) の記載したTMVの tomato streak 系, Holmes の分類による Marmor tabaci var. canadense と判定された。
4. トマト上の病徴をTMV単独の場合とTMVとCMV重複の場合と比較すると, 葉片のえそ斑点や茎での条斑はTMV単独の場合の方が激しく, 明瞭であり, 重複株は葉片のえそ斑点は細かく, 茎での条斑はみられなかつた。またTMV単独の場合は上葉にモザイクを伴わない株が多く, 重複株では上葉に激しいモザイク, 奇型, 糸葉を示している株が大部分であり, また株全体の矮化, 叢生もTMV単独のものに比べ激しい傾向があつた。

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