日本植物病理学会報
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オオムギ斑葉モザイク病罹病植物の寒天ゲル中沈降反応による抗原分析
村山 大記横山 竜夫
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1963 年 28 巻 1 号 p. 9-15

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抄録

1. 供試抗BSMV血清は複雑な抗原抗体系を有することが寒天ゲル中沈降反応の結果認められたが, 同種健全植物汁液による吸収を行なつた吸収血清は常に単一抗原抗体系を示し, 寒天ゲル中に1本の沈降帯が認められた。
2. 吸収血清に見られた1本の沈降帯は常に抗原を入れた凹みのすぐ近くに生じ, 両端が抗原側に弯曲した鋭利な三日月形あるいは弓形であつた。この沈降帯は抗血清を罹病植物粗汁液あるいはその純化液で吸収した場合に消失し, ウイルス抗原による反応の結果と考えられた。
3. 他のすべての沈降帯は抗原を入れた凹みと抗血清を入れた凹みのほぼ中間の寒天中に直線状に生じ, これらの抗原物質はウイルス抗原よりも寒天中をより速く拡散する正常植物タンパクと思われた。
4. 本実験における硫安塩析法による純化免疫原で調製した抗血清のうち, オオムギを用いたものでは少なくとも4種, コムギでは少なくとも5種, トウモロコシでは少なくとも4種の植物成分に由来する抗体を含むことが認められた。
5. 吸収試験の結果, 各罹病植物に共通な抗原物質はウイルスなることが認められた。
6. ウイルス抗原による沈降帯は抗原と抗体との拡散の結果考えられる2円の交点の軌跡上にあると考えられた。

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