日本植物病理学会報
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ジャガイモのキャリコ病の発生
小室 康雄川田 武平野 弥助室木 真澄
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1964 年 29 巻 4 号 p. 199-205

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抄録

(1) 1963年8月, 長野県茅野市の八ケ岳馬鈴薯原々種農場に数株ではあるが, 葉に黄色ないし黄白色の斑紋がみられる (第1, 2図) キャリコ病の発生を認めた。塊茎でのえそ症状はまだ十分に確認されていない。
(2) ジャガイモ・キャリコ病株からジャガイモ, インゲン, ソラマメ, ササゲ, トマト, キュウリ, タバコなど数種の植物に汁液接種したところ, これら植物に汁液伝染し, その寄生性および病徴などから判断してAMVと考えられた。
(3) ジャガイモ・キャリコ病は塊茎によつて次代へ, また心接によつて健全ジャガイモに伝搬する。汁液接種によつて発病したソラマメ, タバコからは, モモアカアブラムシ, ワタアブラムシによつて, ソラマメ, タバコにそれぞれ伝搬した。しかしジャガイモのキャリコ病株およびラディノクローバーの黄斑モザイク病株からジャガイモに対するモモアカアブラムシ, ワタアブラムシ, バレイショアブラムシ, バレイショヒゲナガアブラムシによる伝搬試験結果は陰性であつた。
(4) ジャガイモ・キャリコ病ウイルスの耐熱性は55∼60°C, 耐希釈性は5,000∼10,000倍, 耐保存性は1∼2日であつた。
(5) 八ケ岳馬鈴薯原々種農場における外観健全なホイラー130株について, インゲン, ササゲ, ソラマメなどにそれぞれ汁液接種してAMV保有の有無を調べた。その結果AMVを保有しているものは1株もなかつた。
(6) ジャガイモ・キャリコ病の発生を認めたジャガイモ畠の周囲にはラディノクローバーの黄斑モザイク病株が多数発生していた。その1株から分離したAMVはジャガイモを含む数種植物に対する寄生性, 病徴, 耐熱性などからみて, ジャガイモのキャリコ病株から分離されたウイルスと同一または近縁なものと判定された。

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