1964 年 29 巻 5 号 p. 234-238
放射線照射による青果物貯蔵研究の基礎資料をうるため, リンゴ青かび病菌 (Penicillium expansum Link) の菌糸と分生胞子およびイチゴ灰色かび病菌 (Botrytis cinerea Pers.) の菌糸を用いて60Co-γ線照射を行なつた。
実験結果の概要は次のとおりである。
1. P. expansum およびB. cinerea の菌糸は高線量率 (約100万ラド/時) で80万ラド照射されると死滅したが, 同線量の低線量率 (約2万ラド/時) による照射では死滅しなかつた。
2. P. expansum の分生胞子の菌そう形成能力は, 低線量率 (約1万ラド/時) のときは40万ラド, 高線量率 (約40万ラド/時) では20万ラド照射で失なわれた。
3. P. expansum およびB. cinerea の菌糸に対する5万∼40万ラドの照射は以後の菌糸伸長, 菌そう形成, 分生胞子形成, および菌核形成 (B. cinerea) を若干遅らせた。
4. 放射線照射による殺菌あるいは静菌効果を論ずるに当たつては, 照射線量のみならず照射時の線量率も考慮に入れる必要がある。