抄録
モモアカアブラムシは寄主植物(カブ)から吸汁するにあたり,篩部に向かつて細胞間に口針を差し入れその跡にしばしば分枝の多い唾液鞘を作る。唾液鞘のでき方からみると,このアブラムシはその口針を深部組織へと進めるにあたつて,口針端を自体の左右の方向に屈曲させつつその進路を求めるが縦の方向には口針を屈曲しないようである。口針の,そう入開始はほとんどすべて表皮細胞縫合部において行なわれる。
タマネギの表皮細胞を用いて,唾液鞘の成長の順序と分枝のでき方とを観察した。
唾液鞘は,2種類あるといわれるアブラムシの唾液のうちの凝固性の唾液によつて形成されることについて述べた。また唾液鞘の役割について考察を加えた。
DMVのような非永続的伝搬をするウイルスでは,アブラムシは5∼20秒という短時間の吸汁で,よくウイルスを獲得する。この短時間の吸汁操作では,口針は表皮細胞層を貫通することは困難である。そこで表皮細胞縫合部にあるプラスモデスマータがウイルス伝搬の場であるといわれているが,本実験において,ウイルス感染阻止作用を有するアカザの搾汁液が,すり付け接種の場合の感染を阻止するのにはんし,アブラムシによる接種に対しては,その作用を示さないことはこの説を裏づけるものである。