日本植物病理学会報
Online ISSN : 1882-0484
Print ISSN : 0031-9473
ISSN-L : 0031-9473
土壌病原菌の腐生生活に関する研究
第1報 土壌中の植物残渣を利用するRhizoctonia solani, Fusarium oxysporum, Pythium aphanidermatumの生存について
小倉 寛典
著者情報
ジャーナル フリー

1966 年 32 巻 4 号 p. 236-243

詳細
抄録

本報告はRhizoctonia solani, Fusarium oxysporum, Pythium aphanidermatumの腐生相における生存様式について検討した。
3病原菌はいずれも汚染土壌中の植物残渣から分離されるが,P. aphanidermatum, R. solani, F. oxysporumの順に生息域は深くなる。しかし,大部分の菌は地下20cmあたりまでに生息する。土壌を過湿状態に保つと,前2者は地表部に近づくが,F. oxysoprumはさほど移行はみられない。また,土壌を地下2mまで掘り取つて,殺菌後,R. solaniを接種すると,30cm以下の土壌では本菌の着生率は低下する。この土壌の成分は,窒素,りん酸には各深度によりあまり差は認められないが,炭素源にはかなり差が認められ,30cm以下で急に減少し,100cmをすぎればさらに減少する。このことは,病原菌が土壌中で生存しうるためには炭素源の有無が大いに影響すると考えられる。土壌中での病原菌の生存期間は,温暖期にはP. aphanidermatumは1ヵ月,R. solaniは3.5ヵ月,F. oxysporumは5ヵ月で菌数は半減する。しかし,後2者は7ヵ月をすぎても少数ながら常に残存する。また,土壌を湛水状態にすると,P. aphanidermatumは畑地状態の場合と比べて菌の減少の様相は差がないが,R. solani, F. oxysporumはかなり早く菌数の減少がおこる。また,寒冷期には菌は残渣上で生存し,翌春になつて減小する。このように病原菌は植物残渣を利用するが,P. aphanidermatumは新鮮なわらを利用し,R. solani, F. oxysporumはやや腐植の進んだわらを利用しやすい。
これらの結果,3菌が土壌中で生存するには植物残渣を利用するが,残渣への着生あるいは残渣上での生存を決定する要因は各菌が到達した残渣中の成分が大きく影響すると考えられる。

著者関連情報
© 日本植物病理学会
前の記事
feedback
Top