1968 年 34 巻 4 号 p. 263-271
サムスン・タバコ汁液中のトマト系タバコ・モザイク・ウイルス,TMV-Lを亜硝酸処理し,トマトやサムスン・タバコに病徴を生じないウイルス株,LN27を得た。LN27に感染したタバコあるいはトマトからN. glutinosaに接種し,その局所病斑からタバコに戻し接種すると,多くは最初は病徴を出さないが次第に発病して来る。その発病期は不斉一で,1~数株の個体がそれぞれ異なる潜伏期間で病徴を現わし,潜伏期間の幅は1ヵ月以上に及ぶ。この発病株の病徴はLN27の親ウイルスTMV-Lに似ているが,区別するためにLN27Wと名付けた。
LN27罹病トマトからN. glutinosaに接種してできた局所病斑からさらにN. glutinosaに接種したときに,多数の局所病斑を生ずる能力のあるウイルスと少数(2~10個くらい)しか生じないものとがあることが分った。前者からはLN27Wが,後者からはLN27が分離された。LN27罹病トマトからタバコ,Xanthi ncに接種すると明らかに大きさの異なる局所病斑ができるが,大きい方からはLN27W,小さい方からはLN27が分離された。LN27罹病トマト汁液を10-4と10-6に希釈してサムスン・タバコに接種したところ2カ月以上にわたり数株ずつ発病し,普通の希釈試験のようにある時点で発病最高値を示すことはなかった。LN27を前もってあるいは同時に接種したサムスン・タバコは,LN27W, TMV-C,およびTMV-Lに対して明らかな干渉作用を示さず,トマトではLN27感染2週間後に接種されたLN27Wの発病を押えた。しかし,LN27Wの同時接種および1週後接種区では明らかな干渉作用がみられなかった。
以上の実験結果からLN27は増殖中に一部のウイルスが毒性を回復してLN27Wに変化し,モザイク病徴を生ずるようになるものと考えられた。