日本植物病理学会報
Online ISSN : 1882-0484
Print ISSN : 0031-9473
ISSN-L : 0031-9473
ポリオキシンに関する研究
VIII イネ紋枯病に対する作用機作
佐々木 茂樹太田 農夫也江口 潤古川 靖赤柴 健夫土山 哲夫鈴木 三郎
著者情報
ジャーナル フリー

1968 年 34 巻 4 号 p. 272-279

詳細
抄録

Streptomyces cacaoi var. asoensisが生産する抗かび性物質ポリオキシンは各種の成分からなり,それぞれ異なった選択的抗かび作用を有する。ポリオキシンのイネ紋枯病に対する殺菌作用および植物体における挙動等について検討を行なった。
1) ポリオキシンの各成分,A, B, D, E, F, Gのうち,D成分がイネ紋枯病に対して最も高い防除効果を示した。
2) ポリオキシン複合物はイネ紋枯病菌菌糸および菌核に対し,有機砒素剤やその他の紋枯病防除剤より強い生育阻止作用を示した。
3) ポリオキシン複合物のポット栽培イネにおける紋枯病侵入阻止効果と病斑進展阻止効果は,MeAsFe Amとほぼ同程度で,その他の紋枯病防除剤より優れていた。
4) ポリオキシン複合物のイネ体上における耐紫外線安定性は,有機砒素剤とほぼ同程度で,6~9日でなお85~50%の効果を保持した。
5) ポリオキシン複合物がインゲンの子葉の裏から表へ,イネ葉鞘の表から裏へ,それぞれ浸透することを生物検定法により確認した。
6) インゲンの茎の切口,およびイネの無傷の根部を,ポリオキシン複合物の溶液に浸漬した場合の上方への吸収移行性を生物検定法により検討し,かなりの量が吸収され移行することを認めた。
7) イネの株元の,種々の処理を施した葉鞘に,ポリオキシン複合物の溶液を塗布し,上方への浸透移行性を生物検定法により検討したが,無傷の葉鞘および病斑のある葉鞘に処理した場合は,ほとんど活性物質を確認することは出来なかった。しかし針で傷をつけた葉鞘からはかなりの量の活性物質の上昇が確認された。
8) ポリオキシン複合物のイネ紋枯病菌菌体内への浸透性を検討したが,明確な結果は得られなかった。

著者関連情報
© 日本植物病理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top