日本植物病理学会報
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ポリオキシンに関する研究
IX. Alternaria病に対する作用機作
江口 潤佐々木 茂樹太田 農夫也赤柴 健夫土山 哲夫鈴木 三郎
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1968 年 34 巻 4 号 p. 280-288

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抄録

ポリオキシンは広汎な抗菌スペクトラムを有し,なかでもAlternaria菌に対して強い活性を有することが判明したので,リンゴ斑点落葉病菌およびナシ黒斑病菌に対するin vitro, in vivoにおける殺菌作用および植物体上での挙動について試験を行なった。
(1) ポリオキシンの各成分A, B, D, F, Gのうち, B成分がAlternaria菌に対して最も高い活性を示す。またG成分はin vitroでは強い活性を有するが,in vivoではその効果は弱かった。A成分およびD成分はin vitroではそれほど強い活性を示さないがin vivoではかなりの効果が認められた。
(2) ポリオキシンはそのいずれの成分でも胞子発芽の際,低濃度で発芽管に異常をきたし球形膨化現象を呈する。
(3) ポリオキシン複合物の胞子内に浸透する作用は弱く,胞子発芽を抑える作用よりは,胞子が発芽する際に直ちに発芽管に作用し異常を起させる。
(4) ポリオキシン複合物の胞子形成阻止力は極めて強く病枝上における形成阻止力の残効力も長かった。
(5) ポリオキシン複合物を圃場の二十世紀梨を用い,自然発病下で散布試験を行なったが対照薬剤と同等以上の防除効果を認めた。
(6) ポリオキシン複合物はリンゴの葉の接種した面の反対側の面に処理してもかなりの発病阻止力を示した。
(7) ポリオキシン複合物の溶液をリンゴの新梢の下葉に処理し,上の無処理葉に菌を接種しても発病抑制力が認められた。
(8) ポリオキシン複合物をリンゴの切口から吸収させ葉に菌を接種した場合には強い発病抑制効果が認められた。

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