日本植物病理学会報
Online ISSN : 1882-0484
Print ISSN : 0031-9473
ISSN-L : 0031-9473
ラッキョウの白色(しろいろ)疫病(新称)を原因するPhytophthora porri Foisterについて
桂 〓一伊阪 実人宮越 盈
著者情報
ジャーナル フリー

1969 年 35 巻 1 号 p. 55-61

詳細
抄録

福井,京都の府県下のラッキョウ栽培地で,中秋から春にかけての低温期にはげしくおこるラッキョウの葉の先枯れ,葉枯れ,りん茎および根部腐敗を原因する病原菌について研究を行なった。
1. 病原菌はイギリスとオランダで,リーキの葉の先枯れをおこすものとして知られている土壌伝染性の疫病菌Phytophthora porri Foisterに一致する。従来ラッキョウ球根貯蔵中の腐敗を原因するとされた細菌類やFusarium菌などよりも病原性が強く急速である。
2. 畑では主として中秋のころの雨後におこる葉の先枯れや葉枯れにはじまり,病状は次第に葉の基部へ進み,ついにりん茎の腐敗をおこすし,また直接りん茎や根部が侵され,しばしば畑で広い欠株をおこす。
3. 本病菌の遊走子のうは,被害部が雨露にぬれるか,被害部を水浸した場合に豊富に形成し,レモン形ないし卵形を呈し,大きさ24.7∼57.7×16.6∼39.2μ,平均36.5×25.2μ。蔵精器は蔵卵器に対しておもに側着しまれに底着する.卵胞子は黄褐色で径18.0∼36.7μ,平均29.3μ。厚膜胞子は形成しない。
4. 本病菌の発育限界は0∼27°Cであり,発育適温は15∼20°Cである.一般の天然培地中で有性器官をよく形成する。寄主範囲はラッキョウのほかネギ,タマネギ,ニラ,ニンニク,ノビルなどのネギ属植物である。病名は白色疫病(しろいうえきびよう)と称することにしたい。

著者関連情報
© 日本植物病理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top