日本植物病理学会報
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温州萎縮ウイルスに対するCitrus属および近縁植物の感受性と病徴
宮川 経邦
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1969 年 35 巻 3 号 p. 224-233

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抄録

Citrus属18種,Poncirus属1種,7種のhybridおよびAeglopsis属1種の実生苗を供試して温州萎縮病樹が保毒するウイルス(Satsuma dwarf virus)に対する反応を観察し,Citrus属近縁植物におけるこのウイルスの寄主範囲と病徴をしらべた。その結果,この実験で供試したCitrus属近縁植物は,いずれも温州萎縮ウイルスに対して感受性を示し,共通の病徴としてほとんどすべての種,品種の実生が接種後1-2ヵ月の間に非永続性のflecking, mottlingあるいはcrinklingを現わした。一たん感染後病徴が消失したこれらの実生の組織を,温州苗に戻し接種すると,典型的な温州萎縮病の症状を現わした。
温州萎縮病の症状とされている永続的なサジ型,舟型葉は,温州実生および温州苗(接木により育成)にだけ現われ,接種後間もなく現われるflecking, mottlillgよりかなりおくれて3ヵ月以上を経て発現した。
圃場の温州樹にひろく保毒され,この実験で供試したすべての接種源に含まれていたtristeza virus (lime-reactive component)は温州萎縮ウイルスの接種源をあらかじめカラタチ実生に接種して,感染したカラタチ組織を用いることによって除去されたので,West Indian limeなどのtristeza virusに高い感受性を示す種においても,温州萎縮ウイルスの反応を観察できた。また,tristeza virusを除去した接種源と,保毒したものとを温州実生あるいは接木苗に接種すると,いずれも典型的な萎縮病の症状を現わし,tristeza virus保毒の有無と症状の強さとの間には関連がみられなかった。
この実験に供試した7株の温州萎縮ウイルス接種源は各種の実生苗に対する反応の強さに多少の差異を示したが,これがウイルスの系統によるものか,ウイルス成分,濃度のちがいによるものかは明らかでない。

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