日本植物病理学会報
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Bdellovibrio属細菌の生理生態に関する研究
1. Bdellovibrio属細菌の分離,形態および寄生性
植松 勉脇本 哲
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1970 年 36 巻 1 号 p. 48-55

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抄録

わが国の水田土壌および潅漑水中から,イネ白葉枯病菌を指示菌として,それぞれ異なった寄主範囲をもつ6株の外寄生的な細菌を分離した。
これらの外寄生細菌は感受性細菌とともに平板にすれば2-4日後にバクテリオファージの溶菌斑に類似した溶菌斑を作る。この溶菌斑は時日の経過とともに周縁が多少不整形になりながらしだいに拡大し,遂には平板全体をおおうようになる。個々の溶菌斑の大きさには大きな差が認められるが,それらの平均の大きさは置かれた条件によって左右されるようであり,分離株間には差が認められない。
個々の溶菌斑は通常2種類の異なった形,すなわちビブリオ形と球形の細胞を含んでおり,これらの形には分離株による差異はみられない。ビブリオ形の細胞は長さ0.75μから1.87μであり巾は0.28-0.34μである。球形の細胞の直径は0.28-0.34μである。それぞれの細胞は普通の植物病原細菌の鞭毛よりも太い単極の鞭毛を有する。
これらの外寄生細菌は供試した64種のグラム陰性細菌のうち,5ないし30種に寄生性を示すが,グラム陽性およびグラム不定細菌に対しては寄生性を示さない。供試したイネ白葉枯病菌45株はいずれもこれらの外寄生細菌にに感受性であった。
以上の諸性質から,分離した外寄性細菌はBdellovibrio bacteriovorus Stolp and Starrと同定した。

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