日本植物病理学会報
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ジャヤガイモ葉巻病ウイルスのモモアカアブラムシ体内における潜伏期間
田中 智塩田 弘行
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1970 年 36 巻 2 号 p. 106-111

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抄録

1. モモアカアブラムシのジャガイモ葉巻病ウイルス伝搬における獲得吸汁および接種吸汁の最短時間は5-10分間であったが,1時間以内の吸汁では伝搬は低率であった。獲得および接種吸汁は長くなるほど伝搬が多くなり,48時間吸汁では,それぞれ84および90%の伝搬率を示した。
2. 獲得吸汁を1, 4および8時間行なったアブラムシ群は,吸汁後それぞれ23-24, 12-16および8-16時間の潜伏期間を経て,はじめて健全植物にウイルスを伝搬し,潜伏期間は獲得吸汁の長さにより差異が認められた。最短伝搬所要時間は,獲得吸汁の長さに関係なく16-24時間であり,ウイルス源植物の種類や大きさでやや差が認められた。
3. 伝搬率は,15°C, 22°Cおよび30°Cでは,高温ほど,また獲得吸汁時間が長いほど高くなるが,30°Cでは長い吸汁(24, 48時間)のときは22°Cにおけるより低かった。低温では伝搬率が低く,獲得吸汁に長時間を所するが,ウイルス保有期間は長くなり,2°Cでは40日後でも伝搬が認められた。
4. 15°Cにおける虫体内潜伏期間は24時間獲得吸汁後48-72時間,20°Cおよび25-30°Cでは8時間獲得吸汁後,それぞれ8-16および0-8時間であり,温度と伝搬所要時間との関係は,高温ほどその時間が短かくなることが認められた。

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