日本植物病理学会報
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タバコから得られたキウリモザイクウイルスの系統
VI. 黄色微斑系
都丸 敬一宇田川 晃
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1970 年 36 巻 2 号 p. 87-93

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抄録

香川県下で1960年夏に採集された黄色濃淡斑だけで,奇形,えそ等を伴わないタバコからCMVの新しい系統(CMV-YM)が分離された。本ウイルスはタバコ,N. glutinosa, N. sylvestris,トウガラシ等にあざやかな黄色濃淡斑を示し,えそ,奇形等を生じないことが特徴である。ヒャクニチソウ,ニチニチソウに軽い緑色濃淡斑,ゴマに全身えそ,キウリに軽度の黄斑を生ずるほか,P. floridana,ホウレンソウに緑色濃淡斑および奇形を生ずる。ササゲ,C. amaranticolorの接種葉に局部えそ斑を生ずる。タバコ,N. glutinosa,ササゲ,ヒャクニチソウ,ゴマ,センニチコウなどを判別寄主として,既報のCMV-O, Y, C, LEなどの系統と判別できる。罹病葉搾汁液の耐熱性55-60°C (10分),耐保存性2-3日(25°C),耐希釈性1:10,000を示し,耐熱性は既報の系統より低い。罹病葉から直接フェノール法によって抽出した核酸成分の感染力は対照のリン酸緩衝液磨砕汁より高かった。CMV各系統との干渉効果はほぼ完全である。ただCMV-Cに感染したタバコに重複感染しないことは,その他の系統と異なっており,本ウイルスとCMV-C系との近似性を示唆しているが,さらに検討を要する。CMV各系統との血清反応によって抗原性に差異は認められなかった。精製ウイルス粒子に径約30mμの球状または多角体を示した。本ウイルスに感染したタバコの病徴の回復は顕著でないが,ウイルス濃度には既報と同様な消長がみられた。本ウイルスをCMV黄色微斑系,CMV yellow mild mottle strain (CMV-YM)と呼ぶことにする。

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