日本植物病理学会報
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ヒシモンヨコバイによるクワ萎縮病の伝染に関する研究
II. 保毒虫の接種吸汁について
石家 達爾松野 瑞彦
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1971 年 37 巻 2 号 p. 141-146

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抄録

保毒ヒシモンヨコバイによるクワ萎縮病病原の接種実験により次の結果をえた。
1. 移しかえ接種により,ヒシモンヨコバイ体内における病原の潜伏期間のあることが確認され,その期間は虫の個体によって差があるが,最短13-28日,最長42-55日であった。
2. 保毒ヒシモンヨコバイの接種吸汁期間の最短は3時間であったが,3日以上の接種によって伝染率が急増する傾向がみられた。虫体内潜伏期間のあけた保毒ヒシモンヨコバイはかならずしも連続的な伝染をするとは限らず,断続的な伝染をする個体が多い。
3. 虫の病原保持期間は比較的長く,本実験の範囲内では60日以上保持した個体もあり,おそらく,虫のへい死まで保持されるものと思われる。
4. 接種後発病までの期間,すなわち,クワにおける病原潜伏期間は最短6-13日(おそらく13日に近いと思われる),最長82-87日で,個体間に差があるが,接種吸汁期間とは関係がなかった。
5. ヒシモンヨコバイにおける本病原の経卵伝染については,2ヵ年にわたり保毒,無毒の各組合わせによってえられた,合計260の次世代虫の保毒検定を行なったが,いずれも保毒は確認できず,経卵伝染はしないものと考えられた。

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