日本植物病理学会報
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植物ウイルスの感染と増殖に関する研究
V. キュウリモザイクウイルス感染の可溶性たんぱくとイソ酵素の変化
三沢 正生加藤 盛鈴木 寿夫
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1971 年 37 巻 5 号 p. 348-354

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抄録

本報告は,キュウリモザイクウイルスを接種したタバコ葉の感染に伴うイソ酵素,可溶性たんぱくの変化について実験した結果である。
イソ酵素,可溶性たんぱくはポリアクリルアミド・ゲル電気泳動法により分別された。可溶性たんぱく-感染5日後に泳動の遅いたんぱくが発現する。4.75%ゲル部にだけ分別されるので,分子量の大きなものである。ウイルスたんぱくとの関連は明らかでない。パーオキシダーゼ・イソ酵素-接種短時間後には変化がないが,5日後にはbandにより反応が強くなる。対照でも同一傾向である。新しいbandは生じない。ポリフェノールオキシダーゼも大体同じ傾向である。グルタミン酸脱水素酵素・イソくえん酸脱水素酵素のイソ酵素は,感染後の日数が進むとband数が減少する。しかし前者は5日後では接種葉の方が反応が強い。後者は逆に接種葉の方が弱い。グルコース-6-りん酸脱水素酵素のイソ酵素は,接種5日後には全般的にbandの反応は弱くなるが,接種葉の方が強く反応するbandが残る。6-ホスホグルコン酸脱水素酵素も同じ傾向であるが,5日後は接種葉に新しいbandが生じた。酸性ホスファターゼのイソ酵素は,5日後に接種葉のband数が減少したが,接種葉の方が反応は強い。りんご酸脱水素酵素ではイソ酵素数に変化がなかったが,5日後も接種葉で1個のbandが比較的強い活性を保持した。
要するに,接種4時間後では調査した酵素のイソ酵素に感染の影響は生じていないが,5日後には,種々の影響が現われた。これらの影響は,感染による細胞生理の異常化を示すものであるが,一方ウイルス増殖とも関連していることを示している。

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