日本植物病理学会報
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土壌病菌Pythiumの生態および分類
第XI報 ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム処理をしたカボチャ胚軸部に現われる水浸状病斑
一谷 多喜郎米谷 冨男高橋 実
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1972 年 38 巻 4 号 p. 313-322_2

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抄録

人工気象室において甘栗カボチャ幼苗をHoagland液で水耕栽培し,根部にジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム(NaDEDC)処理を行ない,Pythium ultimum(77号菌)を胚軸に接種して出現する病徴を記載した。
幼苗は若干徒長したが,接種によりガラス室のポット栽培と類似の褐色病斑を胚軸上に形成した。幼苗のcuttingは接種後ほとんどすべて水浸状病斑を形成した。幼苗の胚軸の上端部から髄腔にNaDEDCの注入処理を行なうと,水浸状拡大病斑の顕著な形成がみられたが,結果は不規則であった。Hoagland液および処理時間内に根から胚軸に吸収されたNaDEDCは,ともに供試菌の菌糸発育にまったく影響しなかった。10-4M NaDEDCの根部処理は幼苗に薬害を与えることなく,胚軸上に一様な水浸状拡大病斑の形成を促進した。上記および既報の結果から,NaDEDCの根部処理による水浸状拡大病斑の形成は寄主感受性の増大にもとづくものと考えられる。

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