日本植物病理学会報
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植物ウイルスの感染と増殖に関する研究
VI. キュウリ・モザイク・ウイルス感染組織の代謝変動の解析
加藤 盛三沢 正生
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1972 年 38 巻 4 号 p. 342-349

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抄録

CMV接種組織内のウイルス侵入細胞は,核のDNA量を測定することによって検出することが出来る。本実験ではこれを利用して,接種組織におけるウイルスの移動および代謝変動の2, 3について検討した。
1) CMV接種組織では,接種4時間後までは感染細胞の多くは表皮組織にあり,また4時間目では柵状細胞にも感染がみられ,更に8時間目では海綿状細胞でも感染が認められるようになる。このような感染細胞数の増加は大略36時間で停止するが,ウィルスの増殖はその時期から急速となる。
2) 呼吸変動は感染初期にみられるが,この変動は感染細胞数の増加とのみ高い相関がみられ,ウイルスの増殖量とは密接な関係はみられない。また,ウイルスの最高増殖時においても,ウイルス合成に要するエネルギーは,呼吸の変動をもたらす程大きなものではない。
3) 酵素活性の変動を,従来の方法による測定値に新らたに「感染細胞率」を加味した方式によって解析した。この方式の目的は感染初期における微量の代謝変動やウイルス感染細胞自体の真の変動のみを検出・測定することである。したがってその結果は従来の方法による場合と異なる。Peroxidase活性では,感染直後の著しい増進はみられるが,4時間目以後には低下し,以後5日目までは増進はない。この感染による異常増進はperoxidase分布の多い表皮細胞層の感染時に起り,ほかの細胞層の感染時には起らない。
4) Polyphenol oxidase活性は接種後2時間目まで急激に低下する。この低下は,感染細胞での低下のみならず,周辺の非感染細胞内での活性阻害も含むものである。
5) 本報告で示した「感染細胞率」や,それを加味した代謝変動の解析法によって,従来不明であった点について内容的に明らかにし得ると共に,呼吸など今まで相違の多い結果についても,かなり統一的な見解を得ることが出来る。

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