日本植物病理学会報
Online ISSN : 1882-0484
Print ISSN : 0031-9473
ISSN-L : 0031-9473
植物根頭がんしゅ病の研究
第1報 根頭がんしゅの形態形成:とくに極性の分化について
西沢 良一
著者情報
ジャーナル フリー

1972 年 38 巻 5 号 p. 381-388_3

詳細
抄録

Agrobacterium tumefaciensによるがんしゅ形成の初期症状は一般に針で接種した裂孔部一帯から始まり,やがて皮層が隆起し,外部形態は次第に種々相を呈するに至る。1日の平均肥大度は約0.046mmである。
しゅよう細胞からなるがんしゅには極性は認められていない。しかし,Bryophyllum daigremontianumに関しては,多くの極性現象が観察された。すなわち,茎の下部に生じたがんしゅの根の分化は,上部のがんしゅよりも著るしく,葉の分化はその逆である。なお,類似のがんしゅであってもあるものは正常葉の分化をし,あるものは奇型葉を生じた。これらの理由は,がんしゅ内の生長制御物質の量的勾配如何によるものと推定した。これらの極性が真の極性か否かを確めるために,接木および組織培養の方法により検討した。すなわち,(i)組織培養における割接ぎでは,台木の下部に転移がんを生じ,その下端より根を生じた。(ii)発根がんしゅを有するBryophyllumの茎を所定の長さに切断し,培地に逆位移植すると,生じていた根は萎凋し新しい根ががんしゅの上端より生じた。これはがんしゅの下端に根極が存在したからである。(iii)組織培養したがんしゅ片は,生長後上面より茎葉,下面より根毛状物を生じた。これは極性を生じたためと考えられる。上述の極性分化現象は,宿主植物の種類により著るしくことなる。

著者関連情報
© 日本植物病理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top