日本植物病理学会報
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ダイズ矮化ウイルスの系統
玉田 哲男
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1973 年 39 巻 1 号 p. 27-34_2

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抄録

ダイズ矮化病のウイルス(SDV)は,大別して矮化系統群と黄化系統群とに分けられた。矮化系統はダイズに矮化症状(葉柄,節間の短縮)を示し,黄化系統は葉の退緑,縮葉,下葉の脈間黄化症状を示した。野外ではダイズ,エンドウおよびシロクローバ,ラジノクローバが両系統に感染していたのに対して,インゲンは黄化系統のみ,アカクローバは矮化系統のみに感染していた。
矮化系統群から矮化強毒系統(SDV-DS)と矮化弱毒系統(SDV-DM)および黄化系統群から典型的症状を示す黄化系統(SDV-Y)を選び,3分離系統について比較した。マメ科28種の植物にアブラムシ接種した結果,SDV-DSは13種,SDV-Yは16種に感染した。SDV-DS感染植物はダイズを除き無病徴かまたは軽微な病徴しか示さなかったのに対して,SDV-Y感染植物は萎縮,黄化,赤化などの激しい病徴を示した。SDV-DSとSDV-Yはいずれもジャガイモヒゲナガアブラムシのみによって媒介され,その伝染様式は同一であった。SDV-YとSDV-DSあるいはSDV-DMとを同時にダイズに接種すると,それぞれの単独感染より病徴が激化し,縮葉,萎縮,黄化症状を示した。しかしSDV-DSとSDV-DMとの混合感染個体は両者のほぼ中間の病徴を示した。混合感染植物を接種源としてアブラムシで接種すると病徴が分かれ,各系統が再分離された。SDV-YとSDV-DSあるいはSDV-DMとの間では,完全な干渉効果が認められず,重複感染の特徴である萎縮,縮葉症状を示したが,SDV-DSとSDV-DMとの間には完全な干渉効果が認められた。

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