日本植物病理学会報
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モモアカアブラムシにおけるジャガイモ葉巻病ウイルスの伝搬と伝搬能力保有とに関する研究(続報)
菅原 政芳小島 誠村山 大記
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1973 年 39 巻 5 号 p. 410-416

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抄録

ジャガイモ葉巻病ウイルス保毒モモアカアブラムシ(Myzus persicae Sulz.)の磨砕液とその希釈液を無毒虫に注射し,それらの注射虫を検定植物(Physalis floridana Rydb.)にうつしかえ,伝搬能力の比較検討を行なったところ,ウイルス濃度の高い接種源を注射した虫ほど伝搬率が高く,また早期に伝搬能力を示し,かつ伝搬能力の保有期間も長かった。しかし後次第に伝搬能力の低下が見られた。
罹病P. floridana上で1, 2および4日間獲得吸汁させた後の虫体内におけるウイルス濃度の変化を経時的に注射法で検討した。その結果,長期間吸汁させた虫ほど,吸汁後長期間にわたりウイルスが認められた。しかしながら吸汁期間の長短を問わず,虫体内のウイルス濃度は吸汁後の時間の経過とともに減少する傾向にあった。
保毒虫体内における本ウイルスの存在部位を調べた結果,消食管と体液とからウイルスが回収できたが,唾腺からは回収できなかった。
罹病植物上で1, 2, 4および8日間吸汁させた後の虫の体液中のウイルス活性を比較検討した。その結果,保毒虫の磨砕液を用いた場合と同様に,長期間吸汁させた虫ほど獲得後長い間体液からウイルスが回収できた。
保毒虫の磨砕液(100頭/1ml)および体液を無毒虫に対し継代接種を行なったところ,ともに最初に注射された虫のみに伝搬が認められたにすぎなかった。しかしながらウイルス濃度の高い磨砕液(300頭/0.1ml)を接種源とした場合,2代虫までは認められた。注射虫の場合でも,体液からのウイルス回収は注射後の時間の経過にともない減少していた。
以上のことから本ウイルスは虫体内で増殖せず,単に循環しているように思われる。なお,伝搬能力の保有は体液中のウイルス量に依存しているものと考えられる。

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