日本植物病理学会報
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麥類の赤黴病(黒點病)菌の小麥苗に對する病原性の分化に就きて
西門 義一松本 弘義山内 己酉
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1934 年 4 巻 1-2 号 p. 1-12

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抄録

小麥及大麥の赤黴病(黒點病)はGibberella saubinetii (MONT.) SACC.(分生胞子時代はFusarium graminearum SCHWABE)菌の寄生によつて起る病害で本邦内は勿論世界中到る處に蔓延發生し麥作上の一大脅威である。
本病は小麥及大麥等の出穂後に之を侵害し其結實を阻害する恐るべき病害で昨年の如きは被害甚大であつた。本病は又發芽時に之を侵害し發芽歩合を著しく低下し,更に發芽後も其生育を妨げ,時としては完く之を枯死せしむるものである。
本報告は麥類の赤黴病に關する研究の第1報として,赤黴病菌の生理的分化特に病原性の分化に關する研究の結果である。蓋し本病防除の基礎として,本病菌の研究を遂ぐる上に先づ着手すべき必要事項の一であるからである。
本邦各地から蒐集分離し純粹培養した麥類の赤黴病菌124系統に就いて,之を接種した小麥種子を蒔付けて表はるる病原性の大小を比較した。其比較の範疇としては全蒔付數に對する健全苗數の歩合,即ち健苗歩合を供用した。
本實驗の結果,供試菌系統の内には其病原性の極めて強大なものと,殆んどなきものとが存在し,其間に著甚な生理的分化の存する事が判然した。其強大な病原性を有する系統では,其平均健苗歩合と無接種小麥の夫とを比較すると,其差は誤差の20倍乃至50倍,或は夫以上に達するものも少くなかつた。然るに一方では,其差が誤差の3倍或は5倍以内で誤差の範圍と認むべく,病原性の完く表はれない系統も多かつた。
而も病原性の強弱兩極端を表はす系統の間には,其中間の種々の強さの系統が多數存在して,之等は互に連絡のある一群を形成して居る物の様である。

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