日本植物病理学会報
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日本産ハギ及びヤハズサウ兩屬植物に寄生するUromyces屬菌に就て
平塚 直秀飛永 英次
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1935 年 4 巻 3-4 号 p. 145-171

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抄録

本報文に於ては日本産ハギ,ヤハズサウ兩屬植物に寄生するUromyces屬菌の形態並びに生態に關する研究の概略とそれに加ふるに其の分類學的考察を掲げたるものなり。次ぎに大要を略述すべし。
1) 日本産ハギ屬植物にしてUromyces屬菌の寄生する事の判明せるものは次ぎのヤマハギ節に屬するヤマハギ,エゾヤマハギ,キハギ,ミヤギノハギ,マルバハギ,ヤブハギ,テウセンハギ,ニシキハギ,タイワンハギ,ツクシハギの9種1變種及びメドハギ節に屬するメドハギ,カラメドハギ,ネコハギ及びイヌハギの4種,總計13種1變種にして,これ等の異なりたる植物上の各菌は各胞子世代の形態相互に類似せり,これを北米産ハギ屬植物上のUromyces Lespedezae-procumbentisと比較するときは大體に於て合致するも,たゞその冬胞子の大さに於て日本産のものは北米産のものよりも稍々大形なる傾向あるを認めたり。然れども分類學上より日本産ハギ屬植物上の1群はUromyces Lespedezae-procumbentis (SCHW.) CURT.なる1大集合種に包括せしむるを穩當なりと信ず。なほ,ミヤギノハギ,ヤブハギ,テウセンキハギ,ニシキハギ,ツクシハギ,カラメドハギ及びイヌハギの7植物は今囘新にUromyces Lespedezae-procumbentisの寄主なる事判明せり。
2) ヤハズサウに寄生するUromyces屬菌は從來, Uromyces Lespedezae-procumbentisとして取扱はれたるものにして,他のハギ屬植物上の同種と形態上頗る類似せる點あれども,一方其の冬胞子は後者の其れよりも遙かに大形にしてこの點のみによりても他のハギ屬植物上の菌と分ち,別種として取扱ふを妥當なりと信ず。よつてヤハズサウ上の菌を新種と認定しUromyces Itoanusなる新學各を附せり。なほ,ヤハズサウ上の菌は冬胞子の大さのみならず夏胞子も又他植物上のそれよりも稍々大形なる傾向を有す。
3) ヤマハギ及びキハギに寄生せるUromyces Lespedezae-procumbentisの銹胞子或は夏胞子はこの2植物と同節なるエゾヤマハギ,ミヤギノハギには接種可能なりしも,メドハギ節のマキエハギ,メドハギ,ネコハギ及びヤハズサウには接種不可能なりき。
4) ヤハズサウ上のUromyces Itoanusの夏胞子をヤマハギ,エゾヤマハギ,キハギ,ミヤギノハギ,メドハギ,マキエハギ及びネコハギに接種を試みたるに何れも陰性の結果を得たり。

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