日本植物病理学会報
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イネ褐色葉枯病菌の形態と菌糸の生育温度
内藤 秀樹越水 幸男
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1974 年 40 巻 4 号 p. 319-328

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抄録

1. イネ褐色葉枯病菌の分生胞子は菌糸上の小突起,単細胞のフラスコ型分生子梗,分枝した多細胞の分生子梗上等に形成され,phialosporeと考えられること,および培養性状から,本菌の不完全時代はFusariumに属す。
2. 分生胞子および菌糸は単核性である。
3. V-8ジュース寒天培地上で,菌糸の先端,中間,あるいは菌糸側面からの小柄上に単一に,また連鎖状に厚膜胞子様球状体が多数形成される。
4. 子のう殻は気孔下に存在し,その乳頭状開口部は気孔部に開口し,子のう殻は気孔下腔内で形成されるようである。
5. 若い子のう殻内部はparaphysoidsで占められている。
6. 成熟子のうでは先端部分の子のう壁がやや肥厚し,内壁とみられるものと外壁が遊離しているもの,内部にいぼ状突出部がみられるものがあり,外壁が破れたものでも,内壁ようのものが存在していることなどから,この子のうは二重壁子のうではないかと思われる。
7. 菌糸伸長最適温度は24~27C,伸長限界最高温度は34Cである。比較に供試したFusarium nivaleの伸長最適温度は19~23Cであり,また各温度範囲の菌糸伸長量の全菌糸伸長量に占める割合は,両菌とも20~25Cで最も高いが,25~30Cでは褐色葉枯病菌,10~20Cでは供試Fusarium nivaleが優勢な伸長量を示した。
8. 本菌の分生胞子の形態はFusarium nivaleによくにているが,前述の厚膜胞子様構造の形成,子のうの構造,菌糸伸長温度の差異からみて本菌をFusarium nivaleと同定するには疑問があり,所属の決定は今後の検討にまたねばならない。

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