日本植物病理学会報
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Sclerotinia trifoliorum Erik.の子のう盤の成熟に有効な光の波長域について
本田 雄一柚木 利文
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1975 年 41 巻 4 号 p. 383-389

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抄録

クローバ菌核病菌,Sclerotinia trifoliorum Erik.の子のう盤の成熟に有効な光の波長域を明らかにするため,殺菌土壌に埋没した本菌の菌核に対し,温室内で着色セロファン透過自然光の照射,および室内で着色螢光灯による連続照射および着色螢光灯を光源としたガラスフイルター透過光の連続照射を行った。その結果無色,青色,緑色および黄色のセロファン透過光は子のう盤の成熟に有効であったが,赤色セロファン透過光は有効でないことが明らかになった。一方,着色螢光灯による実験では,赤色螢光灯のみならず,緑色螢光灯および黄色螢光灯による照射も子のう盤の成熟に有効でなかった。指示波長より短い波長を完全に吸収除去する一連の色ガラスフイルターを用いた実験の結果,300∼390nmの近紫外光は子のう盤の成熟に有効であるが390nmより長波長側の可視光は有効でないことが明らかになった。
これらの結果は,本菌の光に対する子のう胞子形成反応は,これまでの近紫外光感受性菌群と同一であること,および黄色と緑色のセロファン下における子のう盤の成熟はこれらのセロファンが有する近紫外部の透過帯を透過した光によることを示すものと考えられる。

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