1976 年 42 巻 1 号 p. 1-6
イネごま葉枯病菌の有性繁殖様式を調べた。本菌はヘテロタリックで,完全世代は交配型の異なる2つの菌株のかけ合わせによって形成される。1972年度に野外から分離した菌株A, B, C, D,は雌雄両性の機能を持っていた。しかしながら,京大保存13号菌(栗林氏1929分年離株),同58号菌(西門氏1925年分離株),ならびにIFO-6631などのIFO保存菌株は子のう殻原基(protothecia)の形成能を失ない,KU-13×IFO-6631の組み合わせのような場合(両菌株は交配型を異にするが)には完全世代はまったく形成されなかった。一方,これらの保存菌株は交配型の異なる子のう殻原基形成能力保存菌株と組み合わせると子のう胞子を形成した。白色変異株を供試した実験結果から,このような長期間にわたる保存株は雄性のみを保持し続けているものと考えられた。このような性質はCochliobolus属菌ではいままで知られていない。