日本植物病理学会報
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日本ナシ葉細胞の微細構造に及ぼす黒斑病菌の宿主特異的毒素と非特異的毒素の影響
朴 杓允
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1977 年 43 巻 1 号 p. 15-25

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抄録

ナシ黒斑病菌Alternaria kikuchiana Tanakaの宿主特異的毒素(AK-toxin)は,日本ナシの感受性品種からのみ,特異的な電解質の異常漏出を処理後2分以内にひきおこした。それに反し,非宿主特異的毒素であるテヌアゾン酸とフェニル酢酸は,日本ナシの感受性品種と抵抗性品種の両方から,若干の電解質の漏出を処理後3時間目にひきおこした。AK-toxinで処理したナシ葉細胞における微細構造変化が,感受性品種の葉細胞の原形質膜と細胞壁の間で高頻度で生じているのが観察された。この間では,原形質膜は,細胞質の内側に異常に陥入していた。この膜の陥入は,AK-toxinによる宿主細胞の最初の構造変化であり,この時,他の細胞内膜系は,構造変化をひきおこしていない。抵抗性品種の葉細胞は,AK-toxinによって全く影響を受けなかった。他方,テヌアゾン酸あるいはフェニル酢酸で処理したナシ葉細胞では,AK-toxinに対して感受性,抵抗性品種の両方に同一の変性をひきおこした。この毒性代謝産物は各々,非選択的に両品種の葉細胞のすべての細胞内小器管に変性をひきおこした。しかし,陥入の如き原形質膜の変化は認められなかった。これらの代謝産物の細胞内膜系に及ぼす非選択的効果は,これらがすべての膜系に作用点をもっているかもしれないことを示す。非特異的毒素による電解質の漏出は,AK-toxinのそれとは異なる効果により生じたと考えられる。AK-toxinによる電解質の異常漏出と原形質膜の陥入は,この毒素が感受性細胞の原形質膜の機能と構造に影響を与えたことを示している。

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