日本植物病理学会報
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イネ白葉枯病の抵抗性機作に関する研究
III. 抵抗性および罹病性品種における細菌抑制物質の生成速度と細菌の増殖経過
中西 清人渡辺 実
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1977 年 43 巻 3 号 p. 265-269

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抄録

イネ白葉枯病感染葉から簡易酢酸エチル抽出法で抽出される細菌抑制物質の生成速度と,組織内病原細菌の増殖経過とを対比して検討し,抵抗性発現に果たす本抑制物質の役割を明らかにしようとした。
1. 農林27号に本病細菌I群菌のT7174SR, N5810SRを,金南風には病原性喪失株のN5612AvSRをそれぞれ針束接種した不親和性感染葉では,細菌抑制物質が感染1日後にすでに多量に生成され,細菌の増殖に先行して接種3∼5日目には最大量に増加し,その後も10∼14日目まで高濃度が持続された。組織内での細菌の増殖は抑制物質の生成量と対応して明らかに阻害されていた。
2. 金南風にT7174SR, N5810SRを,農林27号にII群菌のT7147SRをそれぞれ針束接種した親和性感染葉では,細菌の増殖が抑制物質の生成よりも先行して急速に増殖し,やがて病徴を発現した。抑制物質は感染初期にはほとんど増大がみられず,発病期ごろからわずかに増大し始め,病斑拡大に伴って徐々に増加して発病末期にはかなりの生成量に達した。
3. これらのことから,本抑制物質はとくに感染初期の病原細菌の増殖を抑制し,抵抗性の発現に密接に関与するのであろうと推定された。
4. 前報の水抽出液と同様に,簡易酢酸エチル抽出法でも健全葉から微量の抑制物質を検出した。

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