日本植物病理学会報
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いもち病罹病イネにおけるエチレンの生成とずりこみとの関係
高坂 〓爾寺岡 徹
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1977 年 43 巻 5 号 p. 549-556

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抄録

いもち病によるイネのずりこみの発現機作を検討した。
1. 接種後種々の時期に接種葉を剪除し,その時までの感染がイネの生育に及ぼす影響をみると,生育阻害は侵入直後ないし潜伏期剪除区でもみられ,剪除の時期が遅くなるほど阻害が強くなった。また病斑部のみを初期に剪除すると生育阻害が著しく軽減された。
2. エチレン発生剤エスレル(2-クロロエチルホスホン酸)を葉身にパンチ施用すると,施用後抽出する葉身・葉鞘の伸長阻害,出葉期の早まり,またしばしば施用葉葉節部の上偏生長がみられ,これらの症状はいもち病菌接種による生育阻害症状と全く一致した。
3. 罹病性品種では菌侵入直後からエチレンの生成がみられ,接種11日目まで増加したが,14日目以降は急減した。抵抗性品種では接種2日目に一時的にエチレンの生成がみられたのみであった。
4. 進行性病斑ではエチレンの生成が多く,単位病斑面積当りの成生量はほぼ一定に保たれている。停止型病斑ではエチレンの生成は非常に少ない。
5. 上位葉に接種するほど,また病斑数の多いほどずりこみは甚だしくなるが,エチレンの生成量も多くなる。
6. エスレル施用イネといもち病菌接種イネについて,処理後14日目までのエチレン総生成量を概算し,単位エチレン量当りの生育阻害度を比較すると,接種の場合が阻害度が強かった。しかしエチレンの発生時期,持続性の差などを考慮すると大差があるとは考えられなかった。
6. 以上の結果から,いもち病罹病イネでずりこみを起す主起因物質はエチレンであろうと考えられる。

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